【2014年1月号】ずさんさが出てきた与党と分散を脱しきれない野党
―再生への可能性見せながら流動する日本政治―
安倍内閣は日本再生を掲げ、かなり成功しつつあるとみら れている。アベノミクスはじめ、デフレ脱出やイノベーションと同 時に企業の内部留保を賃上げに回すなど経済団体の積極 性を含め、さらに2020年第2回東京オリンピックの開催とその 成功を目指す各界の努力など、国民全体として縮み思考から の転換が進み始め、これらのパフォーマンスが国際的にも評価 を受け、経済・社会の「前向き思考」が風潮となってきた。しか し、年末における国会での与党運営がこの可能性に冷や水 を浴びせかけた気配の中で新年を迎える。
すなわち、特定秘密保護法案の審議をめぐって、尖閣諸 島問題以来の反日態度や防空識別圏問題はじめアジアの領 土問題を含む中国の軍事的海洋進出にみられる安全保障 問題にかかるわが国の危機管理への緊張感や各国安全保 障問題をめぐる摩擦があり、従来から特定秘密保護法案が目 指す安全保障がわが国にとって課題とされてきたことが当然 としても、巨大与党となった自民党安倍内閣の取り組みは余 りにもずさんで丁寧さを欠いたものであり、国民全体の不安に 対する十分な説明責任を果たしていないで、その結果、参議 院で強行採決となり、法案そのものへの不信を払しょくできな かったのである。
国会終了後の安倍首相談話はこの件についての反省を かなり慎重に表明したもので、政府の釈明としては一応の段 落を持つものといえるが、国民全体に流れる政府不信は容易 に溶解せず、内閣の今後の積極的な努力が求められる。 それは、その後の世論調査の結果に明らかで、たとえば12 月8・9日に実施された共同通信社の世論調査結果によれば、 電話による対象1427件(うち有効回答1020件)、安倍内閣 支持率47.6%(前回11月23・24日―57.9%)・自民党支持率 38.3%(同43.6%)、民主党支持率9.6%(同6.9%)、「この法 律に対して不安を感じる」70.8%「不安を感じない」22.3%、と なっており、前回と比べて内閣支持率の約10%低下、自民党 支持率の5%低下・民主党支持率の約3%上昇となって跳ね 返っており、他のメディアの世論調査においても同様の結果 が出ている。
ただ、この問題に対する野党は自律性もなく分散的で、特 に野党第1党民主党は与党時代にこの問題の提起を試みた が指導力がなく分散的で共闘の成果はなかった。みんなの 党、日本維新の会両党は単なる反対ではなく新しい野党とし ての動きをしたが腰砕けで、みんなの党は分裂し野党再編成 は必至となった。(伴)