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Int'lecowk 2025年5/6月号(通巻1150号)特集概要

税・社会保障制度を考える

Contents

2024年年金財政検証と年金改正法について
 芝田 文男(社会保障研究者/元京都産業大学法学部 教授)

被扶養配偶者制度と女性のキャリアパス
 近藤 絢子(東京大学社会科学研究所 教授)

 私たちの生活に深くかかわっている、税や社会保障制度。今年は、「2025年問題」※や5年に一度の年金改革の年でもあり、夏には参議院議員選挙も控える中で関連する政策も論議されており、より注目が集まっていると考えられる。2024年10月におこなわれた衆議院選挙では、国民民主党が「103万円の壁」を178万円に引き上げる政策を掲げ話題を呼んだことも記憶に新しい。一方でこの「年収の壁」は、働く人々(とくに既婚女性)の就業調整や働き控えといった問題も指摘されている。このようななか、本号では、社会保障制度のなかでも直近の法改正や社会的な関心が集まっているテーマとして、年金および年収の壁が女性のキャリアパスに与える影響について取り上げる。

 特集1は、芝田文男氏(社会保障研究者・元京都産業大学法学部教授)より、「2024年年金財政検証と年金改正法について」と題して、ご執筆いただいた。2024年の公的年金財政検証と5月16日に閣議決定された年金制度改革法案に基づき、年金制度の持続可能性の改善状況および改正の検討事項と政府案の内実を説明し、それらを議論していただいている。年金制度の長期的な持続可能性を予測するにあたって、人口や生産性伸び率の上昇をもとにして、4つのケースが検討されている。ほとんどのケースで持続可能性の指標となっている所得代替率が好調なことから、制度の持続可能性が改善していることを説明した後、年金制度見直しで検討されている改正の検討事項(オプション)についても論点の整理を行っている。

 特集2は、近藤絢子氏(東京大学社会科学研究所教授)より、「被扶養配偶者制度と女性のキャリアパス」と題してご執筆いただいた。昨今注目を集めている「年収の壁」の存在が、既婚女性のキャリアパスにどのような影響を与えているのかをデータから明らかにしたうえで、望ましい制度のあり方について提言いただいている。まず、既婚女性の所得分布から103万円と130万円が「年収の壁」となっていることを確認したうえで、103万円の壁は税負担額の変化がそこまで大きくないことから、焦点を第3号被保険者制度に絞っている。第3号被保険者制度の制度的問題を確認したうえで、女性の結婚や出産前後での年収分布の変化から、結婚や出産を機にフルタイムの仕事を辞めた人が、子供が成長後も扶養内でパートに従事するという構造を確認した。また、元から年収が高い人は出産後も扶養に入らないことが多いことから、女性が出産後も正社員として働く層と扶養にとどまる層に二極化していることを指摘した。最後に、共働き世帯の増加と生産年齢人口の減少という状況のなかで、抜本的な問題解決にむけて、問題を先送りせず具体的な議論を始めるべきであると主張している。

国民の5人に1人が後期高齢者(75歳以上)の超高齢化社会を迎えることで雇用、医療、福祉といった日本経済や社会の広い領域に深刻な影響を及ぼす諸問題の総称

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