(公社)国際経済労働研究所 所長 本山 美彦
「ドンロー主義」(Donroe Doctrine)は、「モンロー主義」にドナルド・トランプの名前を被せた用語である。
周知のように、「モンロー主義」は、1823 年に「ジェームズ・モンロー」(James Monroe)大統領によって宣言されたものであり、欧州と米州の相互不干渉を目指した米国の姿勢を表現したものであった。それとは対照的に、「ドンロー主義」は、「まず米国の利益」(America First)を最優先し、外国への内政干渉も辞さない政治姿勢を表す用語である。
トランプは、2025 年1 月の大統領就任直後から、この姿勢を強調していた。南北アメリカ大陸で米国が絶対的な覇権を握るために、中南米諸国に影響力を拡大させている中国、ロシアを排除するという政治姿勢が「ドンロー主義」の中身である。そのためにも、中・ロに接近している南米の左派政権を打倒する必要がある。2026 年1 月のベネズエラへの軍事介入は、その具体化であった。しかも、トランプは、メキシコ、ブラジルへの軍事介入も辞さないことを公言している。
米軍は最新鋭の原子力空母「ジェラルド・フォード」(Gerald R.Ford)を中心とする「空母打撃群」(Carrier Strike Group、CSG)に加え、「強襲揚陸艦」(Amphibious Assault Ship、AAS)の空母である「イオー・ジマ」(Iwo-Jima)や複数の「ミサイル駆逐艦」(Guided Missile Destroyer)を2025 年当初からカリブ海に展開してきた。1万5,000 人を超える米兵を集結し、海軍戦力の25%をベネズエラ周辺に投入しているとされる(JIJI.COM 2 月5 日,https://www.jiji.com/jc/article?k=2026010700645&g=int)。
「ラテンアメリカ・カリブ海諸国共同体」(Community ofLatin American and Caribbean States 、Comunidad deEstados Latinoamericanos y Caribeños 、CELAC) は、2026 年1 月4 日に緊急オンライン会合を開催し、米国のベネズエラ攻撃に関しての協議を行った。アルゼンチンの親米路線によって、各国間の意見が完全に一致するには至らなかったが、それでも、ブラジル政府は米国の軍事侵攻を強く非難し、メキシコ大統領も「隷属と介入は拒否する」との声明を出した。ウルグアイ、チリ、コロンビアも、米国を非難した。
トランプ政権は、自分たちになびいてくるアルゼンチン大統領「ハビエル・ミレイ」(Javier Milei)の中間選挙(2025 年10 月、与党圧勝)に400 億ドルをつぎ込んだ。これに、同大統領の批判者たちは、アルゼンチンへの内政干渉だと強く反発している(BBC News Japan 10 月27 日, https://www.bbc.com/japanese/articles/cy8vg58eeywo)。事態がこのまま進めば、トランプ政権は、世界から孤立するのではないだろうか。
2026.2