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地球儀 メガソーラ規制に乗り出した地方自治体

(公社)国際経済労働研究所 所長 本山 美彦

 北海道庁は、2025 年9 月17 日、2024 年1 ~ 12 月の外国資本による北海道の森林取得状況を公表した。それによると、この1年間で、295 ヘクタールもの森林が新たに外国人によって取得されることになった。ここで、外国人というのは、海外に拠点を置く法人・および外国籍の個人と、日本国内で活動する外資系企業の2種を指している。前者が36 件162 ヘクタール、後者が13件133 ヘクタールを取得した。
 2006 年から2024 年までの累計で、外国資本が取得した森林面積の合計は、10,396 ヘクタールである。ただし、林野庁は、この数値が過大に受け取られることを防止する狙いで、外国人による森林保有は、全国の私有林面積の0.07%にすぎないと、あえて書き足している(https://www.rinya.maff.go.jp/j/press/keikaku/250916.html)。


 外国人による国内不動産の所有権を認めていないフィリピンなどの諸国と違って、日本は外国人に日本の不動産取得の権利を認めている。外国人によって取得された不動産管理の仕方も諸外国に比べてきわめて甘い。加えて長らく放置されてきたことから、所有者不明の森林が増えている。いまでは、日本の森林は外国資本にとって格好の投資対象になってしまった。
 2024 年、外国資本による森林取得面積が、北海道内で最も大きかったのは、シンガポール資本が取得した白糠町(しらぬかちょう)での93 ヘクタールで、利用目的は、メガソーラ建設である。岩見沢市の59 ヘクタールも、スペイン資本によって買われたもので、同じくメガソーラ用である(https://hre-net.com/syakai/syakaibunka/85748/#google_vignett)。
 2025 年9 月17 日、北海道釧路市議会は、釧路湿原の環境を守る目的で、10 キロワット以上のメガソーラの設置許可を厳しくする条例を制定した。この条例は、2025 年10 月1 日に施行され、2026 年以降に着工する事業に適用される。釧路市内では、2024 年時点で、10 キロワット以上のメガソーラが600 件超(計11 万キロワット超)も稼働している。湿原に生息する希少な野生生物への悪影響を懸念する声が市民の間で高まり、市議会がこの声に応えたのである(https://www.sankei.com/article/20250917-QOVHPFHRYZPYFIR4PS3D54TTUE/、産経新聞オンライン、2025 年9 月17 日付)。

 静岡県伊東市でもメガソーラ建設に反対する住民の運動が高まっている。伊豆高原や小室山周辺に大規模なメガソーラ建設計画が持ち上がった。観光や温泉に依存する地域経済への悪影響、土砂災害のリスクなどに不安感が市民の間で大きくなった。住民の一部は裁判に踏み切っている。ちなみに、同市議会からの不信任決議を受けた同市の元市長は、反対運動のリーダー的存在であった。

2025.11

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