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【2017年3月号】オールド社会主義の犯罪―北朝鮮金正男暗殺事件の怪

 「北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄―金正 男氏の暗殺事件についてマレーシアの保健当局者は2月21 日に記者会見し、遺体には針で刺されたような外傷 心臓 発作の形跡もないと明らかにした」(2月22日神戸新聞朝刊)

同当局は司法解剖は未だ結論がでていないとしている が、これで正男氏の毒殺はおおむね公認されたことになる。 また同当局者は、DNA鑑定のために遺族の協力が必要だ としているが、遺族からは遺体引き取りの申し出はないし、 マカオ在住の息子ハンソル氏(21歳)がマレーシア入りした との情報はないとしている。またマレーシア病院の前では北 朝鮮大使が遺体引渡しを要求しているが、マレーシア当局は 「遺族とのDNA鑑定による身元確認と死因特定が先」と の立場でこれと対立し、病院前で北朝鮮大使が声高にマ レーシア当局を非難して遺体の引き渡しを要求している様 子がTVに写し出され、公然たる対立となっている。北朝鮮 大使は政府として「マレーシア政府が遺体を勝手に処理し、 不当な結論を得ようとしている」と非難していることが明らか となっている。

他方、暗殺者は4人の北朝鮮人がマレーシア国内で具体 的に行動し、ミャンマーとベトナムの女性を動かして正男氏を 空港の自動チェックイン機の側で、何か布切れを顔に覆って 毒に触れさせ、正男氏が痛みを訴えて係員を頼り、空港医 務室に到達する直後に倒れて担架で搬送される中に死亡 した経緯が空港の6台のカメラに写されている様子が公開さ れている。

この間、首謀者とみられる北朝鮮の男4人はそれぞれ中 国を経由せず、中近東やウラジオストク経由で北朝鮮に帰 国し、実際に手を下した2名の女性はマレーシア当局に逮捕 されたことが明らかとなっている。まことに綿密な計画の下に 実行され、証拠隠滅にも周到である。

後日、国際的な非難が北朝鮮に対して行われるであろう が、その動機は金日成の後継争いで勝った三男正恩氏が 国外にいる長兄との権力争いに出たものであろうが、これが 社会主義を名乗った国家の「なれの果て」なのか?

正男氏の長子金ハンソル氏は姿を表していないが、い ずれ父親について暗殺の対象として追求されるであろう。 「オールド社会主義―独裁国家のなれの果て」として、何と も情けない話である。

(会長・板東 慧)


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