本サイトへ戻る
カテゴリー一覧

【2004年4月号】冷戦体制の後遺症と東アジア危機

冷戦体制崩壊後15年、世界情勢をめぐる価値観は大きく変わったが、なかなか変わらない人や社会も残っている。政治の社会で最もそれが強いように思う。

民主党の佐藤(観)議員の秘書給与横領問題はあきれてものがいえぬが、何人もの前例があったにもかかわらず、ベテラン議員が「何故?」という感じがす る。しかし、この場合も、永年の冷戦時代の社会党政治生活のマンネリから生まれた弛みが背景にあるように思える。

北朝鮮という国も全く冷戦時代の後遺症というより、その停止症状といってよいが、今回の韓国の大統領弾劾問題も冷戦時代後遺症の一種に思えてならな い。韓国の近況については、2月号のこの欄で紹介したが、ノムヒョン大統領は、韓国の新世代に推されて政治の新機軸を掲げたようにみえたが、やはり政治献 金では従来の政治家と変わらず、「清潔」を叫びながら財界からの献金を受け取っていたことが暴露され、野党から攻撃された。当初は野党もより大きな献金を 受け取っていることから、その攻撃をかわせるかに見えたが、ノムヒョンは謝罪もせずに政治的にこれを逆手に取ろうとして野党の反撃を買ったといえる。カネ のスキャンダルに関してはキムデジュンも同じで、ノムヒョンがその黒い霧を不問にしただけで、未だ解決していない。前大統領のほとんどが退任後逮捕される という韓国のジンクスは未だ消えていないのである。

もとより、キムデジュンもノムヒョンも改革を掲げて、社会政策や人権など、積極的な政策を実行に移してきたことは事実で、その点は評価されるが、周知の ように、太陽政策は必ずしも成功せず、韓国側の開放政策にもかかわらず、結局、北朝鮮の核開発と欺瞞政策を許す結果となり、冷戦体制時代とほとんど変わら ない状況が続き、少なくとも、朝鮮半島秩序は全く変化せず、むしろ奇妙な危機状況が続いているのである。

しかも、ノムヒョンの場合、政治的未熟の結果、与党を自ら分裂させて少数化させ、その上で野党を挑発して緊張関係をつくりだして、この結果を招いた。逆 にいえば、危機をつくりだして少数与党に有利な選挙環境を演出しようとしたとも取れる。北朝鮮は、「かつて世界に見ない議会によるクーデター」とこれを評 して、ノムヒョンを擁護している。確かに、野党を含めてノムヒョンに対抗する大統領候補は見当たらず、ノムヒョン支持の若者層は意気軒昴であり、国民世論 も今のところ野党批判が強い。しかし、政治的未熟と自己過信からくるノムヒョンの賭けは、現在の韓国にとって危険極まりない。

ノムヒョンは殊更小泉批判を持ち出し、他国批判によって世論を誘導しようとしている。韓国経済もひずみが大きく、国内世情不安は大きい。わが国のマスコ ミには対岸の火とばかり、ノムヒョン支持論が多い。しかし、この問題は、さほど単純なものではなく、下手すると東アジア危機に点火する可能性もあり、冷静 な対応が必要に思える。(伴)


地球儀 の他の最新記事