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【2020年1月号】流動化しはじめた国際関係 ――EU・アジア

新年あけましておめでとう。さて、今年はどのような年になる のであろうか。  

2019年世界は、欧州ではEUという結束がギリシァの経済破綻の可能性に続いて英国の離脱表明によってやや流動 化の様相を呈し、これからその手続きを巡って様々な揺れが表面化するだろうし、他方アジアでは香港市民の独自志向に対する中国政府の強硬態度を巡る対立とそれに対する米国をはじめアジア諸国による中国政府に対する批判的態度の表明など、統治機能をめぐる抗争が表面化して、国際関係における揺らぎが現実化した。この種の問題は現段階でさほど 大きな問題とは言えないが、背後には20世紀までに成立した統治機能と国際関係における一定の承認事項が、21世紀に入って新たな国際関係を形成する過程における認識との間にずれが生じ、そのための修正を巡って違和感が生じたことを意味する。  

その要因とはらむ問題点は、欧州の一体感が英国による違和感によって動揺しつつあること、従来形成されてきた欧 州と中近東との関係を巡って中近東各国の自立志向や中近東各国間の相互関係の変化などによって新たな国際関係への再編成等を含む流動化が起こっていることを意味する。もともと欧州各国と中近東諸国は20世紀まで一種の主従関係にあることが多かったが、20世紀後半から末葉に至って中近東諸国の自立傾向によって、その関係の再構築の条件が強くなってきた。またアジア諸国も20世紀前半までは、主に欧州諸国にやや従属化あるいは植民地化が主な関係であったが、20世紀後半に至ってその関係に変化が起こり、それが21世紀に持ち越されたともいえる。かくて20世紀までの欧州対アジアおよび他の途上国との関係が、21世紀に至って根本的に変化する潮流の中にあるといってよい。また、20世紀後半には欧州諸国に米国が加わり、むしろ第二次大戦の戦勝国をリードしてきた米国が主要な勢力となって、アラブ・アフリカ・ラテンアメリカを含む諸国で米国が支配勢力の中で主動力となってきた傾向が強い。第二次大戦の結果、その戦勝国とし て米国・欧州各国に加えてロシア(戦後当初はソ連)が、個別の利害には違和感をもちながら、国際連合における主導勢力として共同してきた結果が戦後国際関係の基本となってきた のである。  

これらの諸関係が、21世紀の今日流動化し始めたといえるのではないか。   (会長 板東 慧)  
 


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