本サイトへ戻る
カテゴリー一覧

【2018年8月号】働き方改革をめぐる課題

政府が重要法案としてきた「働き方改革関連法案」が6 月29日、参院本会議で可決された。この内容は以下の通り である。

1. 残業時間の上限規制
・残業は年720時間まで、毎月で100時間未満に
・違反すると、懲役や罰金
・労基署が指導する際、中小企業に配慮
(大企業2019年4月、中小企業2020年4月)
2. 同一労働同一賃金
・基本給や手当で正社員と非正規の不合理な待遇差を解消
(大企業2020年4月、中小2021年4月)
3. 脱時間制度の導入
・年収1075万円以上の一部専門職を労働時間規制から除外
・働いた時間ではなく成果で評価
・年104日以上の休暇取得義務
・一度適用されても、本人の意思で離脱可能
(大企業、中小企業 2019年4月) ( )内は導入時期

参議院厚生労働委員会は、これに対する要望や監督指 導の徹底を促す47項目の付帯決議を可決した。脱時間制 を導入した事業所すべてに労働基準監督署が立ち入り調 査するなど、野党が導入に反対してきた脱時間給制度に関 する13項目が盛りこまれ、国民民主党・立憲民主党も付帯 決議に賛成した。働き方改革関連法は、基準法など8本の 法律を一括で改正する。そして、長時間労働を是正するた めに、残業時間の規制は原則「月45時間、年360時間」と 定め、繁忙期に配慮して、上限は年間で計720時間、単月 では100時間未満に規定し、違反した企業には罰則を科 す。これは、大企業には2019年4月、中小企業には20年4月 から適用する。

同一労働同一賃金については、正社員が非正規など雇 用形態に関係なく、業務の内容に応じて賃金を決める制度 だが、基本給は勤続年数や成果、能力が同じなら同額とす る。休暇や研修も同様の待遇を受けられるように改め、通勤 や出張手当ても支給する。大企業が20年4月、中小企業が 21年4月から導入する。

以上が主な内容であるが、これはまさに、1947年の戦後 の労働三法成立以来、70年来の改革といえる。この間、若 干の改革はあったが基本的な構造は変わらず、今日に至っ た。この意味で画期的だが、一面から言えば遅きに失したと もいえる。これを基盤に、今後の改革に期待したい。その内 容はわが国における労働契約の内容にかかわる「労働規 定のあいまいさの克服」にある。 
(会長・板東 慧)


地球儀 の他の最新記事