【2016年9月号】20世紀世界構造の大転換と今後
21世紀に入って際立ってきた世界構造の大転換が今日 顕著になってきた。
その第1は、米国の一強支配が転換しつつあること、第2 にはギリシアをはじめ南欧全体の財政困難などに直面してき たEU体制の動揺に次いで英国がEU離脱を国民投票に よって決定し、さらなるEU体制の動揺が顕著になってきたこ と、第3にグローバルな反戦体制が定着した結果、戦時インフ レが発生する可能性がなくなり、自由主義体制の下で福祉 国家体制が一般化し、デフレ体制化してきたこと、第4に新 興国・途上国の成長が著しく、国際関係に影響を与えてい ることである。
すでにソ連圏における社会主義体制は前世紀末に崩壊 し、社会主義が体制として力をもつ時代は終わった。確か に、中国を筆頭にベトナム・カンボジア・ラオス・キューバなど いくつかの小国に社会主義は存在するが、まず筆頭の中国 自身が市場経済化を進める計画経済も不徹底となり、共産 党が国家権力を掌握しつつ経済体制は国家資本主義の 亜種ともいえる体制にあり、他の社会主義を掲げる国家もほ ぼ同様な状況にある。
自由主義経済というのは、人々がそれぞれの生活欲求に 基づいて消費を選択することによって市場が成立し、それを 契機に技術革新や新商品が開発され、買手市場が支配す る。それに伴って資金が流動し、金融が触発される。
これに対して、社会主義経済や統制経済は、供給そのも のを限定するので自由な市場は形成されないわけである。そ の結果、生活欲求や消費欲求が市場を選択するために買 手市場が支配することとなり、それを契機に技術革新や新 商品が開発されるのである。わが国では日銀が2%程度のイ ンフレを志向しているが、これは茶番である。
さて、EUは戦後、欧州の平和を求めて新しく構想された もので、精緻なシステムを構想したが、通貨の共同性に依存 しつつ、各国の財政・経済政策のコントロールを欠いたため に危機を迎えたことと、あまりにも拡大を求めて各国経済の 質についてのコントロールが困難となったために機能的な困 難に陥った。
これ一つみても、前世紀に成立したシステムが機能不全 に陥る例は多い。様々な点で新しい世紀のシステムとして検 討すべきことは多いことを痛感する。(会長・板東 慧)