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【2013年11/12月号】逼塞感の出てきた世界情勢にわが国はどうすべきか

2013年という年は取り立てて言うほど明確な特長を持つ年とは言い難い。しかし、じっくりと見渡すと世界は大きな曲がり角にあるような感じが深い。

その特徴を挙げるといくつかある。第1には20世紀後半かけて前世紀末に成立したEUがその中の小国の1つギリシアの財政破綻を契機として困難に陥り、先行きも危ぶまれるようになり、世界への指導力を急速に低下させたことである。第2に超大国アメリカを颯爽と率いてきたオバマ大統領が主に内政の絡みでレイムダックといわれるほどに指導力を失ったことである。第3に世界第2位の大国にのし上がった中国が、社会主義市場経済と称する国家資本主義の下で放漫な利権社会と特権階級がはびこった結果、極度な格差社会と人権抑制社会を生み出し、その内部批判を避けるために海外利権の拡張と軍事強化によって覇権主義をあらわにした結果、内外矛盾を激化させて改革が進まない事態に陥ったことである。

このような事態のため、急速に成長してきた新興国家群が新たな発展政策を模索する中で国際正義と経済発展のヘゲモニーが失われつつある可能性に直面している。さらに未だ離陸できていない多くの後発国家への指導力が発揮出来なくなっており、加えてイスラム原理主義等のテロリズムがこれら途上国の発展やそれと先進国との関係を妨げる要因となっているのである。

この意味において21世紀が求めるべき国際関係やグローバルなビジョンが陰りつつあるといえよう。しかし、科学技術の発展やエネルギー問題の解決など協力すべき課題は明確であり、それに伴う国際関係の新たなありよう―そして国連改革など差し迫って追求すべき課題は明らかである。

わが国はようやく永年のデフレから脱出する契機をつかみかけており、アベノミクスを掲げて積極的に世界の改革に向かって共同するスタンスを持つ。未だこの先行きに困難はあるが、「日本再生」の安倍内閣のプレゼンテーションは各国リーダーの支持を受けている。わが国にとっては20年以上の雌伏の期間の後に生まれたチャンスであり、次第にその認識は広がり深まりつつある。今こそ米国・EUはじめアジア新興国のリーダーとこの新たなビジョン形成に努め、それをさらに世界の新興国リーダーと積極的に交流し、新しい国際間の相互発展のビジョンに高めていく必要がある。今や日本はそのイニシアティヴをとる位置にあるといってもよい。

もとよりわが国がそのような立場での役割を果たすためには国内でさらなる議論が必要である。今まさしくTPPの議論を通じて産業界においても、特に農業の世界でこの新たなビジョンへの接近が求められている。労働組合は14春闘の展望も出てきた。これをさらに深めなければなるまい。 (伴)


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