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【2004年1月号】さて、2004年はどのような年になるのか

2004年が明けた。今年はどのような年になるのだろうか。

振り返って50年前を思い起こすと、1954年は朝鮮戦後不況の年であり、まさに冷戦体制がスタートした年である。この50年、冷戦から冷戦終結後の世 界のさまざまを見て来たが、この10年余はまさにポスト冷戦体制の世界の多重構造が見えてきたといえる。その中には、グローバリズムの展開の下での世界経 済の再編成と競争システムの変化、テロや民族問題にからむ局地紛争の散発、それに対応するアメリカのユニラテラリズムの展開、国連・IMFなどの国際調整 の機能不全が顕著で、新たな国際調整をめぐる哲学とシステムの再構築を迫られている。それがどう展開されるか、再び「不確実性の時代」の感がある。ところ で、これを読み解くために、さらに50年前を振り返ると、1904年は「日露戦争開始の年」である。欧米先進国による世界列強が確立された中で、日本がこ れに対抗して世界へ進出し始めた象徴的な時期である。この日本の進出は国力の増強の意味において「正」のパワーの形成の側面を持ったが、結果としては帝国 主義の拡大に向かって、「負」の結果を招くこととなった。そして、さらに前の50年をたどると、それは、ペリー来航翌年の「日米和親条約締結の年」 1854年である。ここで、日本の開港が本決まりとなり、世界への窓口が開かれた。このようにみると、この50年ごとの刻みはまさに、わが国が世界に開か れる象徴的な歴史の転換点を示している。これを願みて、2004年はどうなるのだろうか。

イラクへの自衛隊派遣は12月から始まったが、本格化するのは新年に入ってからであり、戦後憲法体制の下で、いわばルビコンを渡る新たな事態を迎える可 能性がある。当然、憲法改定へとすすむ日本政治の「パラダイム」の提示の一歩といいうる。もう1つのきわだった転換の可能性としては、10年余にわたる構 造不況―失われた10年からの脱出が明確になる年となろうが、これは単に不況からの脱出にとどまらず、日本経済にとって全く新しい地平を開く構造改革への 道を踏み出すこととなり、さらに、戦後の高度成長型経済との決定的な決別の中で、世界経済の指導的な一員としての役割をどのように発揮すべきかが問われ る。さらに重要なことは、高齢社会・成熟社会の急速な展開の中で、長期を見越した年金・高齢社会政策への転換、郵政・道路など公共事業の民営化、ディレ ギュレーションの徹底による経済活性化とシステムの再整備などが問われる。そして、それらを総括するものとして、政治の改革がある。未だ、その道筋は不安 定であり、さらなる政局の揺らぎを経なければならないだろうが、昨年の総選挙でようやく片鱗を見せはじめた2大政党政治への転換の課題である。

2004年に至って、ようやく「失われた10年」からの脱出のメドがたち、それは同時に、少なくとも21世紀前半への道標が明らかとなり始める年を予見させる。 (伴)


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