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【2011年9月号】泥沼の福島1号炉の障害解決─その「伏魔殿」の中身を暴露するのは菅内閣の責任だ

8月初旬に実施された各メディアの世論調査で、菅内閣支持率はほとんどが10%台で、すべて前回よりも低下し、発足以来最低となった。また、一部に広島原爆記念集会での首相演説を反映して若干浮上したものもあったが、ほぼすべてで民主党支持率は過去最低まで低下した。首相は脱原発発言を強調して延命策を打ち出しているかのようであるが、従来の彼のあらゆる新規提案に見える発言と同様に、「個人的発言」として公的発言かどうかを曖昧にし、さらにこの種の首相発言はすべて「思い付き」といわれ、政策的手続きを経ず、具体的な解決の道筋が示されず、機関的論議や手続きが皆無という特徴を持つ。まさしく一国の政治的責任者としても組織人としても稀有で珍妙な存在という他はない。

片や民主党内では、首相が辞任に至る条件を提示したかのような手続きの詰めを執行部が重ねているかに見られるが、首相はそれが辞任の条件であると約束したかどうかは明確にしないで、全党的な議論を煮詰めている過程とは到底見えない。有力者らしき人物の発言もいずれも何らかの合意形成の努力に欠けていて、決め手を欠いた希望的観測の打ち上げだけが先行しているようである。それでいて、大震災被害の除去や救済は大幅に遅れ、声はすれども姿は見えず、で一体民主党国会議員は具体的にどのような努力と成果を上げたかはほとんど見えず、党の有力者はどこで指導力を発揮しているのか分からない。民主党は党として機能しているのかどうかさえ、国民には見えないのが実態である。

特に問題は、東電と経産省を含む原発そのものの障害を巡る原因と責任は何も明らかでないことだ。賠償に関わる対応や原子力委や保安院に関わる組織問題などの改善や電力企業の世論操作の責任問題などは遅きに失しているとはいえ、取り組みがあったのは当然であるが、最も重要な問題点は以下である。

まず、被爆等の被害基準が文科省・経産省・官房長官の発言の間で明確でなく、動揺を続けており、1次的な危険基準と年間通じての生活条件における基準とが曖昧で、政府の責任回避の余地を残している。これが政府への不信を強めている。

それ以上に重要な点は、原発事故そのものの責任問題である。福島第1原発の故障や修理過程の障害はほとんど毎日報じられる。つい先日は米と仏から導入された重要機器が共に事故で動かなくなったといわれた。もともとGM から輸入された1号炉そのものが欠陥機器でなかったかという疑いも専門家の間では出ている。事故後直ちにサルコジ大統領と共にやってきた世界最大手の原子力企業アレバの女性社長はその後解任されたという。この企業は海外受注で大赤字という理由による。全欧に原発による電力を供給する仏原子力企業にも大いに問題ありなのである。東電福島1号炉でこれほど事故解決のメドがつかないのは何故か。導入後40年も経て、こんなに解決のメドがつかないのは何故か。東電が伏魔殿のようであり、経産省との癒着も疑われ、原子力村の学者にも不信感が募る。どうもただ事でない。電力不足や節電強調ばかり先行するのも眉唾であり、国民の多くから信頼を失っている。この隠蔽された内実を明らかにすることこそ菅内閣の責任であろう。(伴)


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