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【2015年7月号】18歳選挙権制の成立をめぐって

今年6月、選挙権年齢を18歳以上に引き上げる改正公職選挙法が国会を通過し、来年参議院選から実施されることとなった。戦後の選挙法改正によって20歳以上のへの選挙権の引き下げが実現して以来70年来のことであり、これまで長い道のりであったが、この間わが国は多くの国に取り残されて、先進国はもとより途上国の大半も18歳選挙権制下にある。わが国が何故このように取り残されてきたのかの理由は単純ではないが、やはり総括的に言えば民主主義の遅れといわざるを得ない。もとより社会一般における民主制という意味から言えば、先進国といわれる中でも、さらに多くの途上国の中でわが国よりも経済・社会一般で遅れたとみられる国でも18歳選挙権制を持つ国が多いが、やはり総括的に言えばこの格差は民主主義の差と言わざるを得ないのである。これはしかし、かなり説明を要するであろう。

わが国の場合、この選挙制度の確立によって、民法をはじめ、さまざまな社会経済法制の改正を進めねばならないとされる。それは従来の法制における20歳=成人から18歳=成人への社会的大転換を意味する。要するに、大人一般として、法的な地位が関わり、いわば飲酒・喫煙や結婚など社会的行動の上で自主的に決定できるかどうかという重要な要素が関わってくるからである。もとよりこのようなことは事実上年齢に関係なく自ら決定しているというのが一般的な傾向ではあるが、いざ法律上の違反行為かどうかとなると厳しい規制があるわけで、その規制基準そのものが転換することを意味するからである。

細かくいうと何百という要件が変わっているはずであり、これをそれぞれ法として変更していくことは大変な作業である。恐らく時間の経過とともにじわじわと明らかとなり、それに沿って個人の行動が規制されるために、心理的にも立居振舞の上でも従来からの修正や変更を迫られることになり、下手をすると知らぬ間に法的な違反や秩序的な混乱を招くようなことも起こってくる。何はともあれ、気をつけなくてはならない。そして何よりもこの年齢に関わる人はもとより、世間全般が、これを大きな秩序転換として再認識しなければならならないし、政治の世界では高齢化社会に向いていた関心からこの青年―成人期への関心に向かって高めなければならないし、特にわが国で青年の無気力化や閉鎖化が強まる傾向をこの機会に政治関心や社会関心を強めるための様々な努力を改めて強める必要がある。

特に最近の少年犯罪の増加や青少年意識の内向化に少年法をめぐる問題など、青少年の社会参加への啓発を社会全体のものとしていく必要があろう。このように考えると、18歳選挙権の確立は、戦後民主主義の一大試練となる可能性があるというべきであろう。

(会長・板東 慧)

 


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