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【2014年10月号】労働市場の顕著な構造変化が進む

今年に入ってから労働市場の顕著な構造変化が進んできたことが指摘できる。その特徴は、各企業で非正規社員から正社員への転換が急速に進んでいることだ。

総務省の労働力調査によると、この4-6月期に正社員として働き始めた人の中で、転職や自社登用で非正規から転換した人の数をみると99万人に達し、これは前年同期比で22%増加していることがわかった。リーマンショック後の雇用停止で非正規の転職が激しかった2009年7-9月期の104万人以来のことといわれる。ほぼ100万人増という数値は、労働力不足に陥った小売やサービス業が人材を囲い込むので、パートなどを転勤のない限定正社員などに切り替える現象が顕著になっていることで、「就職氷河期」と言われ、非正規が当たり前と言われた一時期と異なって、「若者の正社員登用」が広く普及してきたことを示すもので、昨年春以来のアベノミクスによる賃金上昇圧力が普遍化する傾向の特徴ともいえそうである。

正社員に転換した99万人の内訳を年齢別にみると、15ー34歳が64万人と65%を占め、これを前年同期でみると50万人で62%であった。これはかつての30代の就職氷河期世代の非正規社員が当然とされた時代からの脱出傾向が、顕著となったことを意味する。今年7月の正社員の有効求人倍率は0.68倍と04年以降で最も高く、各企業が技術力やサービス力がある人材の囲い込みと正社員化に力を注いでおり、経営力のある企業ほど正社員志向が高まっており、これは地方にも波及している。労働力不足一般というのではなく、人材不足が一定レベル企業で波及し、そのための人材育成・人材確保・定着対策という流れが顕著になっている。

そのための勤務時間・地域を限定し、雇用条件の多様化が進んでいる。外国人社員の登用や、地域限定正社員などの多様化も進む。一例を挙げると、スターバックスコーヒージャパンがこの春、契約社員800人の正社員化を決めるとともに、勤務地限定制度を設けた。また、日本郵政も4月に契約社員4700人を定正社員化した。さらに、ユニクロのファーストリテイリングは6月から人事制度を変更して1300人の正社員化を進め将来16000人を目指すという。この流れは変わらず、ますます激しくなり、我が国の雇用構造・労働市場構造の激変の時代に入ったといえよう。                    (伴) 


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