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【2011年5/6月号】東電の原発問題は単なる賠償責任で済むのか

本号は大震災特集なので、あえてここにその関連稿を掲載するつもりはなかった。が、これを掲載せざるを得なかった。またもや東京電力のポカが報道されたからである。別稿にもあるように、今回の東京電力の危機管理をめぐるミステイクは単なるケアレスミスとはとても思えない。危機管理欠如の環境犯罪の一種ではないのか。もとより全社挙げて本当に生命をかけてこの危機から脱出する努力をしていることは疑いないが、どこか気になる。しかも、菅総理がいうように、これは政府挙げて責任を負うべき環境犯罪ではないのか。

その報道というのは、5月16日各メディアで報告されたが、東電が「福島第1原子力発電所1号機は3月11日午後2時46分、地震発生と共に自動停止」「午後3時半頃、津波が到達して電源喪失」「午後6時頃燃料棒露出」「午後9時には燃料の融点C2800度に達し」「12日朝には大部分の燃料が溶けた」と、4月に日本原子力学会が示した見解を12日に追認し、一連の報告を発表したことである(日本経済新聞5月16日朝刊1・11頁)。ここでは、4号機建屋の水素爆発や2・3号機の燃料棒メルトダウンも報告されており、当初の想定よりも損傷は深刻であり、高濃度の放射性物質を含む汚染水への懸念も強まった。

すでに発生以来、2カ月が経過し、1号機の燃料棒のメルトダウンを防ぐためと称してつい最近まで様々な努力が行われ、今にも解決するかの如くいわれながら、繰り返し危機が到来したかのごとく報道され、多くの関係者が心理的にも生活的にも苦行を強いられてきたし、犠牲も払わせられた。その責任はどこにあるのか。菅総理はつまびらかに説明する責任がある。数10年にわたって原子炉を操作しながらそこまで分からないものなのか、それほどに日本の原発をめぐる科学技術はお粗末なのか、お粗末になったのか。あるいは、つまびらかに出来ない事情があるのか。東電も明確にする説明責任がある。

様々なメディアによる論評を鵜呑みにするわけにはいかないが、しかし、多くの科学者が実名を挙げて、「原子力村」なる一連の東電御用学者の存在を指摘し、2010年ノーベル化学賞受賞・根岸英一教授が「東大の先生は買収されている」とまで指摘する(週刊現代5月21日号)のはあながち事実無根とは言えまい。

東電の犯罪ともいえるこの問題の最中、いわゆる「ホリエモン」氏が57億円の粉飾決算の刑事事件の上告が最高裁から却下され、実刑2年5カ月で収監された。この程度の罪では大企業なら執行猶予がつくのが普通だが、ベンチャーの騎士にはこの実刑である。堀江氏が正しいとは言わないが、巨大企業犯罪とも思われる東電が「刑事責任なし」なのと、ベンチャー企業の刑事罰のこの対比も気になる。社会的公正に照らして東電の今回の行動は、単なる経営上のミスで賠償さえ払えばよいものかどうか、が問われる。(伴)


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