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【2003年10月号】「戦略なき日本の克服」に緊張感を望む―自民総裁選にみる党内事情と政策論議―

自民党総裁選は、何となくドロドロした党内事情を反映したが、やはり情報化時代の波は避けられず、それぞれの主張がマスコミの前にオープンされた。しか し、その内容はといえば、小泉以外の3人は、余り新味のない反小泉ネガティヴ・キャンペーンに終わり、スタート地点から勝負が歴然としていた。特に,亀 井・藤井の場合には、ほとんど97年以前の公共事業中心の景気対策と同様の趣旨を繰り返すのみに終わった。高村の場合はやや異なり、外交政策など小泉と共 通する見解を述べつつ、厳格な審査を経て将来必要な公共投資を低金利の現在に前倒しして実施せよ、というやや現実性のある提起を行っていた。

しかし、この総裁選の状況は、まさしく、小泉が当初から意図した「派閥の解体」「派閥人事の克服」が現実化したものであり、困難と見られた経済運営の中 でも、製造業中心の企業収益の回復と株価の1万円台回復による経済状況の好転の中で、従来からの小泉批判の迫力を欠く結果となり、反小泉統一候補を策した 野中の引退がそれに拍車をかけたといえる。一般的にみて、小泉路線にやや偶然性のあるラッキーが与し、福祉政策の不分明や旧大蔵省復活を疑わせるやや財務 省よりの財政運営による危なっかしさはあるにしても、小泉抵抗勢力による批判が説得力を持つ状況にはなかったといえる。明らかに、経政会=橋本派は機能喪 失して分解し、従来の自民党体質は解体しつつある。

同時に、これら候補に共通したのは、国連の弱体化や国際情勢の戦略的課題への適応と新たな安全保障体制の構築をめざして、9条を含む憲法改正を早急に具 体化すべきことであった。このことは、戦後、非武装平和主義の下で、なしくずし的憲法解釈を続けたために、アジア安全保障もアジア経済圏政策もアイマイに され、それが、わが国の国際的ビヘイヴィアを面従腹背と日和見にさせてきたことの克服を迫るものである。これは、55年体制という自・社なれあいの結果で あり、冷戦体制崩壊後の世界環境がこれを許さなくなっているのに、積極的にそれに踏み込めないことが、わが国の混迷の原因といってよい。

これに向う戦略再構築こそが緊急の課題であり、民主・自由の合同による新しい政局も、まさしくこれにかかわる。迂回路を通るネガティヴ・キャンペーンに終始することなく、この緊急の課題に向って政党と政治家が襟を正すべき時であろう。  (伴)


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