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【2005年2月号】7年目の香港におもう―一国両制の今―

昨年末に久しぶりに香港を訪れた。前回は丁度、中国返還の前年であったので7年の歳月が経た。そのときは、華南経済の可能性と中国返還後の香港の行末を判 断するために大学のプロジェクトとして研究グループを組んで訪れ、政庁の主要なスタッフからヒアリングしたが、彼らは、中国から軽んぜられないために、華 南だけでなく、中国本土深く奥地に投資することを強調していたのが印象的だった。

江沢民体制は上海閥で、上海を中国の金融センターとして強化するために香港の既得権はかなり侵害され、広東省の力を削ぐための北京政府の策によって、鄧 小平の意図した香港とは異なりかなり地位低下の可能性があった。しかもアジア金融パニックの波をモロにかぶって大不況に陥った。当然、香港のジャーナリス ト・知識人中心に批判が強く反北京的雰囲気が高まり、天安門事件以来の反北京人材も多く、その風潮が高まる傾向があった。

この中で、言論抑圧や北京寄りのビヘイヴィアで行政府の董代表への批判も高まった。しかし、昨秋の議会選挙では体制側が有利となった。もとより、返還記 念に初めて胡錦涛が香港を訪れて董代表へのテコ入れを行ったことも影響しただろう。しかし最も注目すべきは好景気、高成長である。金融パニックから回復し たアジア各国はいま好景気の最中にある。

香港は返還後を恐れて金持ちがカナダやオーストラリアに一旦は逃げたが今やほとんど帰って来ている。景気がよいし、ビジネスに好都合だからだ。この理由 の1つには、香港人の知恵とスピリットがあげられる。しかし、何といっても中国経済の高成長、特に華南経済の高成長が大きい。コスト・関税が安く便利な香 港の港としての能力で、今やコンテナー扱い量は世界トップに踊り出た。しかも中国人が豊かになって、国内旅行並のショッピング・レジャーで訪れてカネを落 としている。60年代に250万人だった人口はさまざまな規制にもかかわらず、今や700万人になった。それだけ人権と自由を求めて入っている。その中で 中国に行っていた一部上場企業が戻り、中国企業が海外進出を図る場合はまず香港に進出する。中国輸出品の決済は香港で行われる。そのための金融センター機 能が高まる。司法も中国から独立し、国防・外交は中国にあるがアメリカの軍艦も自由に入れる。この様なメリットが好景気を支えている。しかし、デメリット もある。まず物価が高いため、香港人の消費は落込み、ブランドものなどは日本のほうが安く、日本買出旅行が流行している。カネ持ちは中国本土系の企業や団 体だという。

しかし、鄧小平が狙った台湾の将来システムとしての「一国両制」は成功か。大いに疑門がある。 (伴)


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