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【2019年3月号】安倍内閣の移民政策に疑問を呈す

改正入管法(出入国管理及び難民認定法)が国会を通過 し4月から試行されることとなり、農業や介護など14業種で外 国人労働者の受け入れが始まり、政治は5年間で35万人を 受け入れることを決めた。しかし、これで人手不足が解消する どころか、社会的混乱を招く可能性があり、移民政策としても 基本的な条件が検討されないままでは将来にわたって禍根 を残すこととなり、原点にかえって再検討の必要がある。

もともと移民政策として根本的な政策原理に基づいてその 環境を整備しその給源について確かな未来可能性も含めた 政策を確立しないでこの種の政策を実行に移すと内外共に その欠陥の影響を受けて国内での混乱と、外交問題にまで 混乱が波及する可能性があることは明らかである。一般に、企 業は低コストを求めがちであり、政府はその場限りの補給策に 陥りがちで、それが歴史的な労働市場・生活環境の劣化をも たらし、労働環境を低下させる可能性がある。また、結果として 就労先での外国人労働者の生活の不安定や地域的摩擦を 招きかねないし、地方経済における公共部門のコスト増を招く 結果となりやすいという問題をはらむ。さらに、一体どこに労働 力の給源を求めるのか、にも多くの課題がある。

もともと労働力不足の原因は単に経済的活況にあるという よりは根本的少子化という歴史的要因にある。一般的に労 働力調査でみても第2次安倍内閣発足の平成12年から17 年で、65歳以上就業者は大幅に増加し中でも75歳以上が増 加しているのに対して、15歳から39歳の若手現役世代は大 幅に減少している。これに対して40歳から64歳の現役世代が 増えたが、その主な原因は女性就業者の増加による。さらに、 今後は団塊の世代が75歳を超えて引退していき、5年間で 100万人単位の労働力不足の時代がやってくる。35万人程 度の外国人労働力の受け入れ程度では、とても充足できるも のではない。

他方で、ここで頼みとする外国人労働力の供給力はどうか を検討してみると、実はこれが大変である。それは、頼りとする アジア途上国が少子化となり、加えて脱途上国化で高度工 業化・都市化という先進経済化をひた走っているのが現状で ある。最大の14億の人口を持つ中国も少子・高齢化段階に 入って生産年齢人口は急減しつつある。これからは外国人労 働力の受け入れに転換する。その他のアジア途上8か国も事 態は同様で、少子化は不可避で、なおかつ工業化と先進経 済化をひた走る。もはや労働力の供給国ではなくなる。

そう考えると、わが国はAI化とロボット化による無人化を急 速化し労働力を確保することによって先進国経済を維持しな ければならないことが不可避となる。この為に、技術・経済の システムを高度化し、高度経済国家の充実に全力をあげる以 外に道はない。          

(会長 板東 慧)


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