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【2019年7月号】変化を遂げる世界の国家体制と国際関係

最近の世界動向を見ていると、この数年来と比べて構造変化が起こっているように思うのは私だけであろうか。  

その第一は、各国の利害関係の中で依然として米中対立が主要な構造であるが、その関係に変化が起こっており、それに対応して各国の関係も変化していることである。  

20世紀後半の特徴は、第二次大戦後に大きく分かれた資本主義対社会主義と開発途上国という体制間の共存と利害対立という構図から、社会主義対資本主義という対立の構図がほとんど主要なものではなくなったということであろう。  

それは、1つには中国が社会主義というよりは、民族主義的な国家資本主義体制という特徴を顕著に浮びあがらせ、加えて途上国の代表としての性格を強めていることであろう。同時にロシアは「社会主義―ソ連邦」という押し出しよりも「民族主義―ソ連邦」というニュアンスが出てきている状況にある。20世紀後半から21世紀初頭にかけて、社会主義対資本主義という世界の歴史的対抗関係があまり主要ではなくなったといえるかもしれない。その背景には、資本主義の高度化が国家的体制になったということと、社会主義のイデオロギー的性格が薄れて国家的体制になったために、国際関係において顕著な差異を見せなくなったということがあるかもしれない。いずれにしても、経済体制が国家を取り込むという構造からみて、ビヘイヴィアとしては、社会主義対資本主義という対立関係が希薄化したといえるかもしれない。現実に中国も「社会主義」の旗を掲げつつ、新民主主義経済体制と表現したり、ロシアにしてもいったん社会主義体制となったものの、様々な点で国家資本主義的様相から脱却し切れてない問題がある。しかも、一応中露はブロック化しているが、それは国際関係のなせる業であって、社会主義体制の成熟化になっているかどうかについては、必ずしも定かではないのである。  

このような状況は、世界の国家体制にとって、きわめて過渡的な様相を呈しているといえる。  
(会長・板東 慧)


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