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【2019年5/6月号】世界における国家体制と今後の可能性

世界における国家体制は、19世紀前半までは封建制を基礎としつつ王制あるいは君主制であったものが、後半になると王制や君主制の下での代議制が導入されたり、ブルジョワ革命などによって民主的な体制に転換する国家が増えてきた。その結果、国民という概念が形成され、「国民国家体制」が成立することとなった。

20世紀に入って特徴的なことは、このような独立国家がさまざまな形態で共同体を形成して同盟国関係を中心にする国際関係が主軸となり、これが第1次世界大戦を引き起こし、さらに、その戦後、わずか20年たらずで再び欧州で、それに続いて日米が対戦する太平洋戦争を含む第2次世界大戦に突入したのである。

同時にこの2つの大戦と戦間期の経済発展によって世界市場が発展し、第2次大戦後の復興とその後の技術革新を軸とする高度成長を通じて、資本主義体制も一定の計画化の導入により「修正」され、その結果、世界経済は高度資本主義化する一方で、欧州では敗戦国へのソ連支配を通じて社会主義化する東欧圏が形成され、アジアでもソ連の影響の下で共産党が主導する国家―中国・ヴィエトナムなどが社会主義を志向する経済体制に移行した。

他方、第2次大戦を勝利に導いた同盟国の中で戦争の被害も少なく経済力でもリーダーシップを有した米国が、英仏など西欧における戦勝国及びソ連と共同し、さらにアジア太平洋・ラテンアメリカにおける諸国と共に指導的役割を果たして国際連合を結成し、戦後世界の秩序形成に役割を果たしたのであった。

資本主義経済は独占化からさらに国家が経済体制の一環として機能することとなり、「国家独占資本主義体制」が生まれるとともに、社会主義への移行を試みた体制の下で、過渡的に人民資本主義へ移行することによって「国家資本主義体制」が成立することとなり、このように国家が資本主義体制の一環として機能すること自体が全く新しい事態であり、「福祉国家体制」もこの結果生まれたものである。  

第2次大戦は世界全土をほぼ大戦に巻き込んだ結果、第1次大戦後成立した「社会主義ソ連邦」も連合国側として参加した結果、戦後ソ連支配地となった敗戦諸国は「社会主義移行」の形態をとってさまざまな人民民主体制に移行した。他方資本主義体制もまた、経済民主化や福祉経済化が進んで、福祉国家体制への移行的要素を含んだ「修正資本主義」化をすすめることとなったのである。この結果、世界の国家体制は社会主義・人民資本主義・福祉国家・高度資本主義・低開発国家というように多様化したのであり、さまざまな体制的可能性を包含することとなったといえるのではないか。 (会長・板東 慧)


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