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【2018年4月号】中国・習近平新体制の確立-集団指導体制からの離脱-

中国は3月に開いた全人代(全国人民代表代表大会・国会に当たる)で国家主席の任期を撤廃する憲法改正を行った。この 憲法改正は約3000名の代議員の無期名投票で、賛成2958票、 反対2票、棄権3票の圧倒的多数で可決された。この結果、習近平主席は2期目が終わる2023年以降も続投することとなった。こ の考え方を盛り込んだ前回の改正は反対10票、棄権17票で可決された。国家元首としての国家主席の1期の任期は5年で、こ の時は国家主席について「2期を超えて連続して就くことはでき ない」とされていたが、今回の改定でこれを撤廃したので、習近 平氏は今回の改正で兼任している共産党のトップ=蘇書記と軍 のトップの中央軍事委員会主席には任期に明文化された上限がないため、2023年以降も制度上は引き続きこれらの地位を維持できるので、党・国家・軍3つのトップの地位を維持することとなる。

憲法では、習氏の掲げる「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」も明記するので中国の指導者の名前を冠した思想が憲法に巻き込まれるのは「毛沢東思想」「鄧小平理論」に続くものである。これに対して、江沢民・胡錦濤両氏主席経験者の思想には氏名がつけられていないので固有の肩書とはなっていないのである。その意味で、習近平氏は毛沢東・鄧小平両氏に 並ぶ歴史的な指導者としての地位を固めるという狙いがあるとい えよう。憲法には、「社会主義現代化強国」「中華民族の偉大な復興」などの習近平氏が繰り返し使う言葉も盛り込まれている。

共産党が国家を指導する中国では党が憲法を決めるので、その党の頂点に立つ総書記習近平氏は党内の反対意見を押さえきれば憲法の改定は思うままである。かつて、1949年中華人民 共和国の建国を成功に導いた毛沢東氏は、76年に死去するまで、党主席として最高指導者の地位を維持してきた。毛氏が発動した文化大革命での反省から、鄧小平氏は集団指導体制への転換を図り、82年の党規約の改正と憲法改正で党主席制を廃 止し、文革で途絶えた国家主席のポストを「2期10年まで」と明確に定めて復活させた。中国は民主主義体制ではないので、優れ た指導者でも任期が来たら下野させるという集団指導体制をいと も簡単に壊してしまったといえる。

汚職・腐敗の徹底した追放の上に成立した習近平体制は、集団指導制を放棄して、この腐敗追放で活躍した王岐山氏を副主席として終身政権に転換した。この体制は、「新シルクロード経済圏構想」に基づく広域経済圏を基盤とした政権である。この強権体制は、大中華民族の復興を掲げ、新しい経済圏の形成を通じて欧州に至ることを宣言した。期待も膨らむ一方で、その強権体質による安保政策と経済政策の不安がある。
(会長・板東 慧)


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