本サイトへ戻る
カテゴリー一覧

【2017年9月号】米国世論の分裂と政治動向

 「トランプ大統領の就任と今後」については、すでに2月号 本稿において米国社会の分裂と政変の可能性について論 じてきた。今日、まさしくこの予測が的中し、かなりシビアな現 実となってきた。特に、この8月12日のバージニア州シャーロッ ツビルで起きた白人至上主義団体クー・クラックス・クラン(K KK)などと反対派の衝突を巡って、トランプ大統領が人種 差別主義者を名指しで批判しなかったことに対する抗議デモ が全米で起き、トランプ大統領の登場そのものが米国社会の 分断を招いているかの現実を改めて浮き彫りにしたといえる。

13日、ニューヨーク中心部にあるトランプの私邸トランプタ ワー前に多数の抗議者が集まり、シカゴやロスでも白人至上 主義者や移民排斥、人種差別に反対する数百人のデモが 起きた。また、シアトルでは右翼団体と反対派の衝突が起きた。

KKKは1886年頃に結成された秘密結社であるが、現在 は白人至上主義者や反ユダヤ主義、反イスラム主義などを 掲げ、ナチズムに類似したネオナチのシンパを含め、数千人 の構成員を抱えているといわれる。12日に起きたシャーロッ ツビルでの衝突は、南北戦争での南軍を率いたリー将軍の 銅像を市内の公園から撤去しようとした計画に抗議したKK Kなどのデモがきっかけで起こり、も35人が負傷し、死者も1 人出たようである。米国では黒人差別を連想させるとして、 南軍関連の記念碑や旗などが近年撤去される傾向があるよ うで、KKKなどはこれに反発して、人種差別反対派との対 立が激化しているようである。トランプ大統領は12日に「様々 な側からの憎悪と偏見、暴力を最も強い言葉で非難する」 と声明したが、KKKを名指しでは非難しなかったために、翌 日、このトランプ氏の態度に抗議するデモが全米各地で起き たという。

全米統合の象徴である大統領の選挙中以来の言動につ いて、白人主義や人種差別や移民問題など、事細かな批 判が持ち上がるのである。

今や全米が、差別言動に対して細かな分裂的対応が起 こり、それが社会問題化するという敏感社会となっているこ とを痛感させられる。

(会長・板東 慧)


地球儀 の他の最新記事