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【2014年8月号】オバマ大統領の指導力の喪失による混迷とその混迷からの脱出

今年1月のマンスリーレヴューや「2014年の世界と日本」では、米大統領の指導力の低下、ギリシアをはじめとする南欧各国の財政混迷を契機とするEUの結束力の弛緩とその原理の動揺に基づく世界への指導力低下という西側の緊張感の低下に対して、中国のアジアにおける海洋進出、ウクライナ問題を契機とするプーチン―ロシアの侵略的行動など、による新たな国際環境が、世界動向の混迷をもたらしていることに対して新たな視野からの取り組みの必要性を説いた。

オバマ大統領は、その後も中国の南シナ海での各国との摩擦やわが国の沖縄尖閣列島への挑発などが続く中で、これらアジア緊張を抑制するための行動を求められていたにも関わらず、3回にわたってそれが実行されず、ようやく国賓としてわが国に続いて韓国に短期間訪れ、尖閣問題などについてわが国との安保条約の順守が表明された。しかし、他方で中国との関係は、抑制というよりは、米中2大国の「新」国際関係の構築にむしろ力点がおかれ、かつてChange」を大きく掲げて登場した際とは異なって、中国やロシアの新たな帝国主義的行動への抑止に積極的な動きを見せていない。

この傾向は今年に入って以来の特徴的な動きとなっている。この背景には、メキシコ系など新移民やマイノリティの支持を背景に大統領選を勝利したが、その主要政策であるメディケア保険で共和党の支持を得られず成功をおさめえず、それが支持の退潮をもたらし、この秋の中間選挙での敗北が濃厚となった。黒人出身最初の大統領として輝かしいスタートを切ったものの議会でも共和党を抑えきれず、財政執行でも抵抗を受け、やはりハーバード出身とはいえ東部エスタブリッシュメントとの戦いでじり貧となり、それを克服するだけの支持を得られずアジア諸国や国際的な支持勢力を結集できず、不信感さえ克服できなかったのである。すでに米国は次期大統領選をめぐる候補選択の段階に入っており、しかも中間選挙を控えてオバマにとっては厳しい判定が下る時期を迎えている。

つい最近の米国での世論調査―7月2日米キビニアック大(コネティカット州)発表―によると、トルーマン以降の大統領12人の中でオバマが最悪という結果が出たという。この調査では前回はブッシュ前大統領が最悪だったようだが、今回はオバマが最悪で、ブッシュがそれに次ぐ結果になったようである。これは米国民が国の方向性に一般的に不満という長期的傾向を示すもので、前回12年の選挙でオバマと争って負けたロムニーが大統領なら今より状況が良かったと答えた人が45%を占めたという(調査は6月24-30日、全米の有権者1446人を対象に実施-このニュースはワシントン共同による)。

オバマは、中国の習近平主席の提案する世界2大国体制による支配という論理にやや乗りかかったが、米国内部からの反発によって、その新思考に乗ることは拒絶したようである。もともと米中2大国体制などというのは習近平の提起するデマゴギーの一種である。(伴) 


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