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【2013年5/6月号】中国の執拗な反日攻勢のウラに何があるのか

中国の尖閣諸島問題をめぐる反日攻勢が執念深く領海 侵犯やそれに近い行動として続き、政府間の公的交流への 拒絶などが続いている。これほど執拗な事例も少ないが、そ れが報復措置なのか侵犯行為を通して事実上の実績づく りを意図するものかはわからないが、わが国との関係のみな らずASEAN各国やインドに対しても同様の攻勢を仕掛ける 状況が長期に続いており、中国側の一方的紛争状況を醸 し出している。

執拗な一方的行為によって既成事実化に持 ち込もうという意図であろうが、近代法治国家としてはあるま じき「外交」行動で、どの国からも反撃され、異常な関係が 東・南アジアで継続している。これは一体どういうことなのか、 歴史上も奇異な状況といわざるを得ない。

前号当欄でものべたが、これは中国の政権が強いからと か正当性があるからではなく、自ら弱点をさらけ出すことの表 れといえる。すなわち、先ず習近平新政権が、その支持基盤 が分裂していて強力な国内基盤を持たず、特に軍からの政 治圧力に弱いことなどの理由によるとみられる。軍はこのよう な弱体なトップに対して自己権力の圧力を見せかけるため に、しばしば権力の誇張を見せかけているともいえ、これをコ ントロールする能力がトップにない傾向が継続している。習主 席は試されているといってよい。この背景は何か。

中国経済は高成長の結果、賃金上昇が続き、09年以来 で人件費が6割強上昇してアジア新興国のトップの人件費 高となり、かつての低賃金・資源高消費下での高成長に よって、設備過剰・在庫過剰の下で輸出減退に陥り、鉄鋼・ 海運等の大幅な景気後退で急速な成長率低下に転換し た。かつては8%の成長率を維持しなければ失業率が増大 するという状況から一転成長率7%以下へと転換して後よう やく7%台の成長率に戻るという不況に陥った。

沿岸地帯に いた大量の農民工も西部農村地帯に帰農し、膨大な失業 者をかかえることとなった。この結果、中国からの海外企業の 撤退が始まり、中国系企業も人件費高騰に適応困難な産 業・企業は中国からの脱出を余儀なくされている。

反日攻撃 でマイナスを被った日系企業はチャイナマイナス1といわれて きたが、もはや大量の中国脱出が始まり、高成長=中国時代 から脱中国―アジア移転による再編期に入った。もとより、中 国市場への期待が維持される自動車・流通等は依然として 中国市場依存率は維持されようが、他の産業では一斉に中 国離脱がすすんでいる。また、高級幹部層の利権依存によ る所得の高度化と貧困層の増大による所得格差の拡大が 顕著で、地震や災害復旧の遅れと大気汚染など公害や鳥 インフルエンザ対策の遅れに対する行政不満と不安が高ま り、これを転化するために反日や外部攻撃が利用される傾 向が強い。習近平新政権が未だに新政策を全く明らかにし ていないことにこの混迷の所以が感じられる。    (伴)


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