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【2013年3月号】オリンピックでのレスリング種目廃止の可能性と 国際関係

ギリシア財務危機に端を発したEU危機はドイツの経済力 とメルケル首相のリーダーシップを中心とする各国首脳の努 力によって一応当面の破綻は回避されたが、未だ危機は 去ったとは言えない。本質的に通貨統合のシステムそのもの に危機要因があるのだから、これからその本質に迫る改革へ の遥かな道がある。

欧州というのは、19世紀以来様々な新 理念と新機軸を編み出して世界をリードしてきたが、「見えざ る手」ともいうべき不問に付してきた問題が残されており、再 検討すべき問題点が多い。欧州―キリスト教の支配論理と モスレム論理との対立やギャップについてもそのようなことが 云える。簡単な問題でないことは云うまでもないが、手つかず で放置しておいてよい問題でもない。多くの新興国が育って きて、国際関係としての利害や対立が拡大するのは当然で ある。EU問題もその一環であるが、これから世界各地で展 開される経済連携・地域共同体問題に大きな影を落とす。

さて、この問題と直ちに関わりないような問題にも見える が、オリンピックの競技種別の改廃もそれに関わる。4年に1 度のサイクルではあるが、当該選手にとっては少なくとも幼 少時代から15年以上かけて鍛錬してきた競技種目が突如、 IOCの1個人の思いつきや意見によって消えるといったこと が現実に起こる。しかもその背後にどのような利害関係があ るのかは正確には明らかにされない、といったことである。今 回のレスリング問題がそれであり、過去にもいくつか事例が あった。その間にオリンピックの開催地決定問題や競技ルー ル問題や勝敗判定問題をめぐる不明朗な歴史があった。

国 際関係は新しい参加者が拡大するにしたがってこの種の問 題は避けられないし、人種・民族問題や人権問題など、絶え ず再検討を迫られる問題が浮上してくるが、国際関係の価 値観をめぐる公正と中正に対する評価と再評価問題はます ます重要になっている。

今回のモスクワにおける通貨政策をめぐるG20においても 永年にわたるわが国のデフレ対策との関係における円安問 題についても、欧州でも新興国でも非難発言がくすぶってい たようである。世界が不景気の渦中にあり、それからの脱出 策を検討しようという中でも、何かスケープゴートを挙げて自 己弁護しようとする国際関係は克服されていない。幸いにし て、そのような結論に至らなかった参加者の英知ある協議は 高く評価するが、ますます厳しくなる国際関係協議への注目 が必要であろう。(伴)


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