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【2011年10月号】幸先よいスタートを切った野田政権のたるみを憂える

退陣を渋って右往左往してきた菅首相の辞任が決まってようやく代表選が行われ、野田代表が選ばれて首相に就任した。自らを「どじょう」に例えて素朴で挙党一致を訴えた立候補演説は、演説上手との定評の事例の1つとして喝采を浴びた。しかし、当初、マスコミ上で圧倒的であった野田人気が、海江田候補を最大集票力を持つ小沢グループが押し、必ずしも野田優位とはならず、世論では圧倒的優位であった前原が今回は外国人献金問題で見送りを決めていたにもかかわらず出馬を決め、決戦投票狙いの選挙になったが、野田の1次投票結果が100を上回り、決選投票で野田が圧勝した。決戦に残った海江田が自説を修正し、民自公3党の申し合わせを無視したことなど、政治家としての不信を買ったことなどによるのであろう。野田は永年の活動でブレがなく、人柄への信頼感があったといえる。ただ、唯一「復興増税」を強調したのに対しては、建前上反対意見が多い中で当然の主張を貫いたという筋論への支持と、財務大臣として財務省に傾斜したという警戒感とがないまぜになったかもしれない。

総理就任によって「ノーサイド」を強調し、従来の党内のゴタゴタからの脱却を訴え、誠意ある公平な立場と、特に人事面でのバランスを重視した挙党態勢は一応党内の支持を得て、鳩山・菅と続いた小手先の会議や機関の乱立を整理して、進んでいない政権交代後の重要課題や実行困難なマニフェストの修正や経済界との協議など党の実行性を立て直す方向も明確にされてきた。しかし、各大臣の引き継ぎ後1週間ほどでぼろが出てきた。鉢呂経済産業大臣の失言による更迭。これ以外にも復旧・復興や雇用・年金など重要政策を抱える厚生労働大臣が第1声で得意気に、1個700円位まではたばこ税を上げるべしと公言したり、防衛大臣が自分は防衛には素人だが、文民統制としては素人がよいと公言するなど、本来、直ちに食言辞任するに値する発言があり、臨時国会を4日に制限するのは内閣が不完全だからと強調する官房長官などが続出した。いわば、大臣になって浮わつき気味の素人集団ともいえる不適切発言の続出である。もともとこの欄でも繰り返してきたように、政党としての「綱領」を持たない民主党はそのよりどころが明確でない烏合の衆で、議員になりたがりの出世主義者の集団になりかねない要素があり、議員の選出過程にもそれがあり、そのために内部の相互批判はほとんどない。グループと云ってもよい意味での政策派閥と云うより出入り自由の仲良しクラブで、それが時として表に出る。鳩山・菅政権時代には明確な総括もなく、政権交代の真の意味を達成できていないいい加減な2年間であった。それに代わってまともな船出をしようとした野田政権が、このままだと内部から崩壊する可能性が露わになり始めたとしたら誠に悔やまれる。国会期日の制限より通年国会を進める位の緊張感を持つべきだ。(伴)

<訂正>前号文中で、福島第1原子炉がGM製とありましたがGE製の間違いですので謹んで訂正します。


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