本サイトへ戻る
カテゴリー一覧

【2009年1月号】多極化の中で新興国との積極的な関係を求められる年

2009 年が明けた。新年おめでとう。今年は己丑の年だが、ちなみにこの年の特徴をみるために歴史を溯ると、明治以降では1949(昭和24)年と1889(明治 22)年が出てくる。前者は戦後直後アメリカ占領下で朝鮮戦争勃発前年であるが、前年の公務員法の発令に続いて団体等規制令公布施行など、戦後民主化の逆 行が顕著になった年であり、公務員定員法成立によって36万人の公務員の整理が行われた。同時に単一為替レート1ドル=360円が設定され、国際貿易への 道が開かれるなど、厳しい中での国際復帰への道が開かれ始めた年。明治22年の場合は、大日本帝国憲法発布の年であると同時に、東海道線全線開通・関西鉄 道・九州鉄道開通の年である。

この2つをみると実に興味深い。明治22年は国家の基本が明確になり、全国的な統一性が進んだ年と言えるし、昭和24年は、やはり国内秩序整備と国際ルールの整備という体制整備が目立つ。

これに対して平成21年は如何なる年になるのだろうか。金融危機に見られるように世界秩序再編成の始まる年となろうが、新興国の経済力の強化とともに、 他方でオイル価格の低落によるオイルパワーの弱体化などが進み、従来のG8やIMFの弱体化と共に世界は多極化し、新秩序の形成に向かって様々な動きが出 てきて、世界のパワーポリティックスに大きな変動が生まれつつあり、新たな秩序の模索が続くことを予感させる。我が国にとっては、やはりこの新秩序を積極 的に形成する一翼を担い、適応することが求められよう。その意味で先の2つの己丑のエポック同様の試練の年となろう。

これと関連して思うのは、新興国のきわめて活発な動きである。中近東諸国を旅すると、この欄でもその都度紹介はしているが、イエメンでは、未開発の巨大 な石油埋蔵量をめがけて、中国やロシアなどが様々な働きかけをしているのに出くわした。首都のサナへのトップのホテル・シェラトンが中国系の経営で毎夜中 国大使館中心のパーティや会合が派手に開かれている。また、元首相のプリマコフをリーダーとするロシア・ミッションとも出会った。昨年11月リビアに出か けたが、ここでも中国の進出顕著で、ツアーに利用したバスは「中国客車」製造のものであり、中国車を多数見かけた。また、華麗で味のレベルの高い中華料理 店があった。このような傾向は従来あまり見られなかったものである。また、中国はPKOをこれらオイル利権のあるアラブ・アフリカ諸国に際立って派遣して いる傾向がある。

他方、ドバイやドーハなど湾岸諸国都市が、福祉・教育重視で欧米に勝る超高層の巨大な文化都市建設を急ピッチで進めていることも注目される。今回のオイ ル価格急落でペースダウンは避けられないだろうが、新興国の世紀をまざまざと感じさせられるのである。(伴)


地球儀 の他の最新記事