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【2008年9月号】何のための内閣改造か―絶好のチャンスを逃したダメ福田―

迷走し ていた福田内閣の改造が実現した。解散総選挙向けの改造なのか、一時建直しの改造なのか、麻生幹事長起用の陰にどのような思惑なり密約なりがあったのか、 評論家たちの憶測も活発な中での発足である。いずれにしても福田総理自体の思惑も決意もあいまいなままだから、冴えない改造である。

形から見れば、派閥領袖総掛りで、かつての自民党スタイルそのままであるが、その領袖たちの実力はかつてと異なり大幅に低下しているので、お世辞にも総 力とか実力派結集とかの形容詞は使えない。女性2人は何とか意味ありげであるが、若手起用の意識もなく、ベテランとはいえ大幅に高齢化した。しかも、その 内実は小泉改革路線の全面否定――郵政民営化反対組の大幅復活、財政改革路線の否定など、いわゆる上げ潮派の全面排除や公務員制度改革の蓄積の風化が恐れ られる。アンシァンレジームそのものである。もとより正統保守主義でもなければ革新でもない。あいまい旧型自民派閥均衡である。これで「安心実現」という のは、「旧型自民安心実現」という意味にしかとれない。

一般には、内閣改造というのは、次の選挙に打って出るという体制の確立を意味するが、今回はそのあたりも不分明である。途中でやはり選挙が戦えないとい うことになれば、「麻生」へ看板をすりかえるという可能性を党内にも見せつつ、実は福田の未練がましさが優先した党内人気とりの「挙党」内閣になっている から、よくわからないのである。閣僚や役員に名を連ねた派閥のボスは実力内閣などと自賛しているが、党内は、選挙を前にして若手や上げ潮派はもとよりブー イングが盛んである。

筆者はもとより自民支持でもないし、福田支持でもないが、餃子事件でも拉致事件でも、この半年余の福田政権の無様が「日本」という国の恥曝しになってき たことを何とか改善すべきと思っていたので、裏切られた感がある。それは、改造後ただちに毒入り餃子問題で、中国から事実上毒が入ったのは中国国内であっ たことをサミット以前に知らされながら、1カ月以上も官邸内部で秘密にしてきたことを、別のルートで暴露されたことなど、内閣改造の意味を打ち消すような 情報が流れてきているからである。要するに福田体質は何も変わらないのである。

改造による内閣支持率の変化は、世論調査で読売41%・日経38%と、この二紙については共に改造前比10%ポイント以上上昇したが、朝日・毎日・産 経・共同のそれは微増にとどまった。いつもあるご祝儀相場さえ怪しげな世論評価なのである。(伴)


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