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【2008年1月号】最近の台湾で発見したこと―政治的胎動の深層にあるもの―

昨年暮に久しぶりに台湾を旅した。すでに8回訪れて、狭い土地なので隅々まで見てきた感があり、山里や古くからの温泉地などでは古き良き日本に出会うような記憶も多い。

今年1月から新幹線―台灣高鐡が開通したが、日本の旅行案内書の多くは未だ詳細な説明がなく、ダイヤさえはっきりしない。

インターネットによると細かいダイヤから乗り方・試乗記までが出ていた。かつて5時間半かかった在来線で台北―高雄間が1時間半と便利なので、高雄―台 南―台中の各1泊と台北に3泊した。妻と2人で全くのぶらり旅でゆっくりしたが、新幹線はビュッフェもなくほとんど日本と変わらず、東北新幹線改良版とい う感じだが、軌道は在来線並の狭軌である。台北が都心の旧駅の地下駅である以外は、大方は都心からタクシーで15分から20分程度かかり、田園の真ん中に 巨大な近代建築の駅があるという雰囲気である。

台湾は、台北264万人、高雄・台中がこれに続く100万人前後の都市であるが、高雄は世界有数のコンテナー港を持つ工業都市であり、台中は台湾省都で あり、かの有名な阿里山鉄道を持つ森林資源の宝庫を抱える。これらいずれの都市も超高層ビルが林立する。周知のように台北と台中の間には新竹という世界有 数のIT都市があり、台中もまたIT型の都市として高度の集積をとげ、宿泊した新築のホテルもネット対応の充実した60階クラスでインドマーチャントなど の出入りも多かった。各都市の若者相手の盛り場も高度なものであった。台湾は今レトロブームで、盛り場の若者タウンも上海や香港の名を掲げながら、大正ロ マンムードあふれるデザインで、その内容は戦前日本統治時代の街並や店舗のリバイバルが多い。また、台湾では総統府はじめ各都市の主要駅や行政機関などに 日本統治時代そのままのレンガ建が使われ、重厚なたたずまいを見せるオールドタウンが生かされている。それだけ見て親日的と誤解してはならないが、日本統 治に対する反応は韓国とは異なる傾向がある。この風潮と重なるが、現政府は台湾独立志向を内在させており、総統府と台北国際空港正面に3階建位の高さの巨 大看板が「国連即時加盟」のスローガンを訴え、各都市のメインとなる場所にこのプロパガンダが掲げられていた。

特に、我が国ではあまり知られず、現地でも秘匿され続けてきた「228事件」の真相究明が公けにされてきたことは、訪れて見て初めて知ったことである。 この事件は日本敗戦を契機に昂まった台湾省人の参政への欲求を、国民党政府はあたかも接収というより没収という姿勢で統治した結果、1947年2月28日 民衆が決起し、国民党政府がこれを弾圧したもので、87年まで台湾は戒厳令下でこの内実は秘匿されてきたが、96年に至ってようやく真相究明に関する公的 機関が設立され、97年に初めて228事件記念館が台北公園に設立され、綿密な資料が展示され、公園の名も「228平和公園」と改め、台湾の歴史的烈士の 記念像や建物が配置された。これまた、台湾の政治的深層の揺らぎを示すものといえよう。これを発見したことは今回の旅の最大の収穫であった。(伴)


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