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【2007年9月号】07参議院選挙の結果をどう読むか

亥歳の参 院選は荒れるとして、橋本内閣・宇野内閣の例が挙げられ、選挙通の小沢の賭けともいえる戦略の的中などのジンクスが当たり、選挙前のマスコミの世論調査に よる予測以上に民主党の議席の獲得と自公連立の敗北が現実化した。特に、公明党のお家芸である組織選挙と自民党における医師・建設・郵政・農漁業をはじめ とする業界組織票が無惨な結果を招き、1議席選挙区での敗北が顕著となった。敗因についてはすでに多くの論評があり、それぞれ当を得ている面があるか、筆 者は以下の点を重視する。第1に、政策的に民主党が優位とは必ずしも言えないが、景気回復が顕著であるにもかかわらず、与党の税制・社会保障・公共投資政 策による負担軽減などの処置やチャンスが、比較的に経済的困難の大きい階層・地域などに配分されず、逆に負担増の拡大や困難を及ぼしたこと、第2に、年金 問題における社保庁の行政腐敗への首相の初期対応に敏速性と配慮を欠いたこと、第3に、閣僚の不適切発言や政治資金問題の多発とそれへの首相の対応に厳格 性と決断力を欠いたこと、等である。これが、組閣における欠陥と閣僚の不誠意の結果、不信を来すこととなった。

安倍内閣は、従来の内閣が解決しえていなかった多くの基本問題を明確にして法制化し、さらに戦後憲法体制のあいまいさについても克服する方向で積極的で あり意欲的であったから期待もされてきた。年金問題についても、直接的には安倍内閣の責任というより、それ以前に形成されてきた行政欠陥であり、閣僚の問 題も任命責任はあるとはいえ、直接責任は個別の閣僚にある。従来この種の問題は、それぞれに解決されてきた性質のものである。それが、ことさら内閣不信を 強めさせる結果となったのは、友達内閣と揶揄されるような首相の対応の未熟さと判断ミスという他はない。参議院選挙が組閣にかかわるものでない以上、国民 の判断は政権交代を求めたというよりは、これら首相の政治行動に対する鋭い批判ということになる。首相は、政権維持を明示した以上、組閣後最初の国民総意 の表現と受け止めて、これらを抜本的に克服するチャレンジをすべきである。今次の衆参関係はわが国の憲政上起こりうる一種の捻じれ現象であり、与野党とも この事態を重く受けとめて、新たな政局上の大実験の場とすべきであり、民主党は真の政権党としての試練の場として、議会の無駄な手管を貪ることなく励むべ き機会である。むしろ、与野党ともに議会を挙げて、最近目立つ高級官僚の改革への抵抗や面従腹背と腐敗を徹底して絶つことに全力を挙げるべきであろ う。(伴)


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