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【2007年3月号】6カ国協議結果の評価をめぐって

北朝鮮・核問題をめぐる6カ国協議が終わり、当事国は一応の成果を得たと評価していることが伝えられている。

しかし、2段階での北朝鮮の核施設の封鎖・停止と無能力化、重油の2段階での供給、マカオの銀行における北朝鮮預金凍結の一部解除・テロ国家指定の解除 などは、北朝鮮側有利を雄弁に物語る。会議終了後に明らかになった北朝鮮北部の大洪水による莫大な被害では、当局の支援がほとんど行われていないことが明 らかであり、北朝鮮が窮迫的困窮にあることが示されている。これに対して、今回の交渉で重油などの獲得が決まったため、国民に砂糖などをお祝い的に配給す ることを決定したとも伝えられ、何かコソ泥的国家とでもいうか、核脅迫での獲得物の一部をすぐに国民にばらまいて成果を喧伝する姿が見える。さらに、この 協議の結果の国内放送は、核保有を6カ国が承認したかのように述べている。しかも、前回、KEDOで支払わされた建設費や重油供与の費用は取られっぱなし で、返ってこないのである。

前回のクリントン・カーターによるKEDOに比べるとまだましとはいえ、やはりブッシュが、イラク戦争での失敗や新たなイラン核問題などでうまくいかず に、アメリカ世論に追いこまれ、上院選挙で敗北したことを反映したといえる。しかし、それだけではない。やはり中国が、韓国・ロシアという北朝鮮寄りの国 家と組んで、やや北寄りに落としどころをもっていった結果ともいえる。中国のアジア外交を象徴的に示したと言えよう。 ただし、もし北朝鮮がこの協定を守らなければ、北朝鮮を追いこめるわけで、きちんと履行できるかどうかにこの結果はかかっている。KEDOの場合、実行過 程のチェックの弱さでやられたのであり、今度はさらに厳しさが求められる。

ところで、日本国内では、拉致問題でがんばれば日本は孤立するとまた騒ぎたてている政治家がいる。北東アジア情勢が上記のように厳しくなってきたことは 事実だが、日本は、核と拉致は同時解決という立場を貫けばよい。このことについて他の4カ国は了解済みであり、拉致には国連の安保理決定もある。かつて拉 致をいい加減に扱ってきた前科を持つ政治家がまた、いい加減な発言をする可能性は大である。「北を追い詰めたら暴発する」「万景峰号など止めても相手は困 らない」というのがデマゴギーであったことは今日明らかである。日本が独自の主張を明確にすることが、北朝鮮との駆け引きを有利に導くことは明らかであ る。(伴)


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