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【2006年11/12月号】外交・安全保障政策で与野党共同すべき点を明示する努力を求める―未だに55年体制を引きずる愚から脱出せよ―

予想通り とはいえ米中間選挙で上下両院共に民主党が勝利し、ブッシュは早速ラムズフェルド国防長官を更迭し、イラク戦略の転換の道筋をつけた。一方で、サダム・フ セイン裁判で死刑判決が出た。もとより、この裁判でも控訴は可能なので、まだ確定とはいえないが、恐らく死刑が覆ることはなかろう。ところが、EU各国は 死刑廃止が強いので、サダム死刑執行反対の声が上がっている。ロシアは死刑法が現存するので反対はしないだろうが、態度は明示しないだろう。アメリカで は、民主党がこれから2年間ブッシュ政権を揺さぶるに違いないし、次期大統領は民主になる可能性が高まった。これがいかなる影響をもたらすかが問題であ る。

もともと共和と民主の政策的差異はかつてのケネディ時代ほど明確ではなく、民主は従来「大きな政府」志向であったが、今やその時代ではない。クリントン 時代にヒラリーを委員長にして健康保険制度の確立に挑んだが成功しなかった。クリントンは、好景気のために政権は維持したが、中東和平も結果として失敗 し、北朝鮮の核開発抑制のために設立したKEDOは、日韓に高額を負担させながら、結果的には北朝鮮がひそかに核開発を続け、今日の核実験に至ったことは 周知である。さらに日本の頭越しに中国と取引をする傾向を見せた。また、保護貿易主義が強いことから対日政策がどうか、さらに対中政策がどうかなど、不安 がある。この意味で、今重要段階にある北朝鮮対応の転換など、今後の影響も気がかりなところであり、発足後、中・韓との関係改善を果たし、対北朝鮮問題へ も積極的に対処してきた安倍内閣にとっては、アメリカの政冶変動の可能性による対米関係の新たな調整と、新たな国際関係の中で国際政治と安全保障について どのようなスタンスと関係の再編成を成し遂げるかが重要課題となる。積極的なアジア外交をすすめ、アメリカの外交路線の揺れにも耐えて既定路線をすすめる ことが必要である。

しかし、国内では、民主党が政権奪取を狙って野党共闘強化で、与党への対決姿勢を強めている。2大政党体制確立をめざして政権交代を求めて民主党が積極 的に努力することは重要であり、国会で与党と対決することも当然必要であるが、安全保障や憲法問題をめぐっては小沢代表と前原前代表など若い世代との間で も、また全党的にも、見解の対立と政策の不統一が明確で、この重大な時期の外交・安全保障に不安がある。しかし、少なくとも外交・安全保障面で与党と民主 とはかなりの点で多数が一致できる要素は明らかにある。

今日の段階で与野党ともに早急に外交・安全保障・憲法問題について、政策的に共同できる点は明示して対外的に共同する努力が必要であろう。(伴)


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