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【2006年3月号】神戸空港開港あれこれ

2月16 日に開港した神戸空港は、さまざまな困難を乗り越えて第3種地方空港として発足したものである。さまざまな困難とは、関西空港の経営困難を慮る運輸当局や 大阪財界の中に「神戸空港潰し」を望むものがいたこと、本来関西空港開港後は騒音と都市過密の中の伊丹の廃港が前提だったが、関空が出来てみると、伊丹周 辺都市の中に伊丹空港存置を望む意見が強くなった事、加えて阪神大震災の復興優先の機運が高まった事、経営主体の神戸市の財政が震災のために困難に陥った 事などが挙げられる。神戸周辺での空港反対闘争もこれらのからみで高まった傾向がある。たとえば、表向きはともかくとして、大阪財界の有力者の反対や、あ ろうことか競争路線となるJRが公然と反対闘争を繰り広げたのも注目される。

神戸空港は都心から16分という利便性と、海上空港で騒音や空気汚染などの影響のきわめて小さい、世界でも最も恵まれた空港である。かつて70年代に は、航空機の能力や公害防除技術のレベルの低さから、この都心からの近さが公害の不安と結びついたが、今日の世界ではそれは克服された。この結果この利便 性や快適性が、これとの競争者に恐れられているといってよい。JRは、新神戸駅中心に早朝・深夜をはじめ増発・停車など、ダイヤや割引料金など今まで出来 ないとしてきたサービスも実行し始めた。関空との競合を気にして、運輸行政はまだまだ規制を強く残している。

確かに、大阪湾上での3空港の管制は今までより緊張を必要とする。しかし、北米の5大湖地方や西ヨーロッパの空港分布の過密さと比べれば、反対する論拠 にはならない。むしろ、わが国の航空行政の遅れを招いた不便や過密や採算性の弱さが問題とされる。震災時の救援の遅れを知る者にとって、また、物流の重要 性や産業の活性化、特に貿易の中で付加価値の高い商品が増加し、それが航空物流の増加を求めているために、空港は不可欠であり、世界の趨勢から見ても、い ずれ近いうちに神戸空港は国際化するのも当然であろう。

泥縄的行政が多いわが国にあって、空港などは不足と気がついたときには遅いので、必要なものは問題が起こる前に準備しておかなければならない典型であ る。このため、国際便について頑なだった国交省も、開港直前に国際間の姉妹都市間のチャーター便を認めることになった。空港開港後間もなく、第9回世界華 商大会が神戸で開かれるが、この影響も大きいだろう。まだ反対運動もないわけではない。しかしTVの街頭録音で、あるおばさんが「今まで反対してきたが、 空港が出来たら乗りますわ」といっていたのと、神戸のホテルでの開港式典で挨拶に立った大阪財界の川上代表の第一声が「関西空港の開港をお祝いします」と いい間違って満座の失笑を買ったのが印象的であった。(伴)


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