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【2004年10月号】改造小泉新内閣の修羅場―安保常任理事国への途―

今回の小 泉総理のブラジル・アメリカ訪問の目的に、国連安保常任理事国入りの根回しがあるようだ。懸案の課題であるものの、未だ与野党含めて賛否が分かれている。 しかし、国連改革のチャンス到来でもあり、与党の賛成は得られるだろうし、小泉路線としては従来の実績をもとにブラジルを誘って実現させようとするのは当 然といえよう。また、議論すべき課題はあるが、積極的にトライすべき時期にきていることも事実である。すなわち、第2次大戦の先勝国体制としての国連の改 革のあり方を問うものとして意義をもつが、問題点は中国の反対が予測されていることであろう。そこで、外交路線の転換と外務省改革という課題を併せてすす める覚悟が必要である。なかんずく、積極的にすすめるべきは、FTAの促進など、特にアジアの域内経済の自由化のテンポを早め、アジア経済圏秩序を積極的 に確立する努力をするなど、アジアとの関係を緊密にすることを含めて、世界外交環境の改革に実を上げる必要がある。

ひるがえってみると、わが国はこの8月で、中国への輸出でEU・米に抜かれて3位となったし、エチレンをはじめ鉄鋼などで生産力のトップの座を譲ってき ており、それらを背景に中国は2010年に向けてASEANとのFTA協定を締結して自由貿易圏構想を積極的にすすめており、さらに拡大する傾向にある。 中国経済には、オリンピックを控えて過剰投資・過剰在庫・素材価格騰貴・消費者物価上昇・不動産投資バブルなどの問題点もあるが、アジアへの進出と対米・ EU関係は着実である。

これに対して、わが国の場合は、実績的に優位にあるとはいえ、FTAに関しては、メキシコ・シンガポールの他は、タイ・韓国などとの折衝もうまくは運ん でいないし、特に農産物をはじめ国内利害と省益による官僚との結託によって国内事情優先のために、国民経済的視野での積極的な対策が遅れており、EU・米 州諸国はもとよりアジア諸国からも批判を被っている。このようにアジアを代表し、アジアとともに進むべき進路が低迷しており、中国やEUからも遅れをとっ ている。さらに、最近の韓国は北朝鮮との融和路線を含めて微妙な動きがあり、台湾の対中関係も複雑である。北朝鮮はもとよりロシアも微妙である。そして最 大の問題は、中国と競合しつつ協調を含むヘゲモニー争いを進めねばならないことであろう。日本外交は、この中で、米国との協調の下で何とかなっているが、 日米安保の将来も含めて明確にすべき部分も多く、米国と協調しつつ、自立とアジアの中でのヘゲモニーをどうするか、明確にすべき課題は多い。安保常任理事 国への途はこのことなしに確立しえない。だから反対という日和見主義の克服も必要である。まさに、内閣改造と同時に小泉内閣はこの修羅場に立つこととな る。(伴)


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