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【2004年8月号】インカ帝国遺跡の探訪とペルーで発見したもの

5月12 日から20日までペルーを訪れた。前回は1994年フジモリ大統領の在任中で、大統領との会見のアポイントもとっていたが、大統領側の事情で変更され、代 わりに教育大臣との懇談の機会があり、大統領が1年に2,000校の義務教育校(小規模であるが画期的なこと)を建設し、日本の芸能人が現地でチャリティ ショーをやり、その売上を含め、工業高校を寄付していることなどを聞き、また、首都リマの都市改革をすすめていることを目のあたりにした。その際はスケ ジュールの都合で、ナスカなどをまわったが、インカ帝国の遺跡まで回れなかった。そのため、今回は、クスコ・マチュビチュ・チチカカ湖など、インカ遺跡全 体を回ることとした。

率直にいって、前回の訪問時と比べて、首都リマ・ナスカなどとその周辺は、道路・公園など、インフラが整備されており、その後のフジモリ大統領の業績が 集積されたことが推測されるが、フジモリ後のペルーは依然として高失業率と経済停滞が続いている。

海抜3,800mのクスコはインカ帝国の財力とクラフト技術の粋を物語る遺跡で、略奪主義スペインもこれを破壊することが出来なかった底力を示すものと いえる。また、天文物理・建築などの科学水準と、今日の技術力でも理解できないさまざまな能力を保持していたことが推察される。また、マチュビチュまでの 距離(列車で4時間)とその峻険に触れてみると、マチュビチュという精巧な中世都市の建設とその生活には、計り知れない不思議が付きまとう。神秘としかい いようのない歴史の疑問は未だに解決できていないし、チチカカ湖周辺を含む海抜4,000m地帯の生活文化は興味津々である。また、多数で豊富、かつ精巧 で廉価な民芸品には幾度も驚かされる。また、民芸品にも、生産性の向上と技術革新が波及していることにも関心させられる。

フジモリ後政権を代表する現大統領の支持率は6%で、まさにレイムダックでフジモリ「カムバックコール」は強いという。フジモリはすでに現政権に告発さ れて裁判による判決で重罪に問われているが、現地の日系人以外のオピニオンリーダーたちの話を総合すると、間もなく現大統領が失脚し、次の大統領が政権に ついて一定期間が過ぎれば、フジモリへの裁判所の決定は消滅か破棄に至ってフジモリがカムバックする条件ができる、という。ラテンアメリカの政権はほぼこ のような経過をたどるものなので、フジモリ「カムバックコール」の確率はきわめて高いし、フジモリの年齢はこれに十分適応できる、という。

さもありなん、とは思っていたが、現地でこのことを確認できたことは、今回の旅で、インカ帝国遺跡探訪と並んで、極めて大きな成果であった。すでに新たな歴史が、ペルーと日本で同時進行的に刻まれつつあることを痛感したものである。 (伴)


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