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【2004年7月号】政界のたるみが政治不信を増幅する─強い自戒を求める─

小泉内閣も長期政権になって、たるみが出ている。参議院選の後、内閣改造するというので、いわば最後の仕上げ段階として引き締まってもらいたい。

たるみの大きな問題点は、年金問題の処理に大きく出た。小泉首相の北朝鮮再訪問は、マスコミも野党も批判にてぐすね引いたが、さまざまの問題はあろうと も、硬直していた5人の拉致被害者を連れ帰ることは誰もできなかったわけで、相手が相手なので段階的な解決でも成果は成果として世論が認め、マスコミはケ チをつけようとして修正せざるを得なかった。曽我さん一家の問題はアメリカの国家原理との関係で安易に解決困難な面を含むので、今後の粘り強い折衝を必要 とすることは自明であり、残された課題となった。この当たり、世論はクールに判断したものといえる。

しかし、年金問題は、その政策のズサンさと強行採決によって小泉内閣の支持率を10%も低下させ、参議院選での波乱要因を残した。ただ、小泉内閣は、改 革・公共事業に頼らない経済回復・自民党派閥機能解体の3大公約において一貫しており、改革過程の不徹底さなど問題は残るにしても、官僚支配のウミを大き く暴露し、しかも経済回復にこぎつけた点において素直に評価されるべきだろう。

これと対比して野党はどうだったかが問題になる。特にその中心である民主党は、政権交代能力を備える上でようやく軌道に乗り始めたかに見えたのに、今回 の国会でのブザマが目立つ。第1に、菅前党首が年金問題を閣僚・議員の国民年金保険料不払いに矮小化し、結果的に自らがつくった陥穴にはまり、その非難を 逃げて連休中に国内で年金政策で対決すべきなのに海外に避難し、さらに、3党合意という妥協案を演出しながら、自分が自ら引かざるを得なくなった。第2 に、小沢が党首を一旦引き受けながら、小泉訪朝が決まると、参議院選の結果を恐れたのか、年金保険不払いを理由に党首につかず、第3に、3党合意の責任者 でもある岡田が党首になるや小沢の主張に沿って、これを否定するに至り、審議拒否と牛歩戦術という旧社会党並みの戦術に没入し、しかもかつてない「秘策」 で年金案を廃案にするとしながら、お粗末な戦術を自民党に見透かされ、原案可決に至った。まことに一貫性が無く、しかも、内容審議を自ら放棄して、今度 は、最も安易な内閣不信任案提出で浮足立った国会終末を迎えたのである。

おまけに岡田は、自ら国会公務員時代に親の会社の役員を兼任しながら「国家公務員法による民間企業兼任禁止規定を知らなかった」と告白している。いやし くも東大法学部出身で国家公務員上級試験の合格者が、このような告白を白々しくできるものか、改めてその常識が疑われる。いわば学歴詐称と同等の罪悪とい えまいか。小泉内閣のたるみとこれにもまして民主党のたるみが政治不信を増幅していると思うのは、筆者のみか。民主党内にもかなりの批判が渦まいているよ うだが選挙もあるので事なかれ主義で済ますのか。その姿勢が問われる。(伴)


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