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【2002年11/12月号】マスコミは北朝鮮報道にもっと賢明になれ

この欄でしばしばとりあげてきたが、北朝鮮をめぐるマスコミの対応が余りにも目障りなことは大方の判断と思われる。つい最近のものでは、横田めぐみさん の子供といわれるヘギョンさんのTV報道に関してである。フジテレビと朝日・毎日両紙の取材によるものらしいが、明らかに北朝鮮が日本向けのお涙頂戴を 狙って世論操作のために仕組んだものであり、インタビューを仕向けられた子供に同情こそすれ、わが日本の聴取者が乗せられるものではなく、めぐみさんの母 親は早くから孫に同情して目をそむけていた。とにかく明らかに不快感を催させるものであった。

確かにマスコミは事実を報道する使命を持つが「作られた事実」を報道する権限はもたされていない。そこに使命としての知恵と英知が不可欠である。今回の 場合は明らかにスクープ競争での行きすぎた名誉心と、少し勘ぐれば北朝鮮当局に今後の取材の便宜でよく思われたいとする助平根性も見え隠れする。そもそも 従来の北朝鮮との付き合いの中で、すでにこの欄で名前をあげた多くの政治家たちが、交渉の窓口を独り占めするか、何らかの利権のためか、拉致被害者の家族 の心情を抑圧してきた歴史が今日を招いたことが明らかであるのに、それがいまだに理解できていないのはまことに情けない。

これ以外にも気になることが多い。拉致被害者や家族との会話でも、もともとわかりきっている心情や事情を何度もマイクをつきつけて繰り返したずねると いった手法は、まさにかつての芸能記者のお涙頂戴方式そのものを感じさせる。それと、情勢認識がお粗末なことである。例えば、クアラルンプールでの日朝会 談が終わった後のABCTVワイドが「会談決裂」の見出しを揚げていた。会談は、日本側が自己主張を貫徹した結果、「継続」になったわけであって、決裂し たのではない、というのが日本の立場のはずである。まったく情勢認識が狂っているのである。

政府が今までのどの政府とも異なって主張を一貫させているのに、マスコミの腰が最もぐらついている。「拉致被害者を返さない」と政府も家族も主張してい るのに、「もし返さなくても大丈夫でしょうか」とか、「北朝鮮に置いてきた子供は大丈夫でしょうか」とか、被害者に対して「子供のことは気になりません か」とか、家族が「子供を日本に連れてきて話をしなければ自由意志は確かめられない」と言うと「誰か政府の役人と一緒に北朝鮮に一旦帰るか、第三国での話 はどうか」と最初から妥協案を出すなど腰が引けており、国論を強化する努力に全く欠けているのである。その証拠にどの大新聞の社説でも「拉致こそが人権侵 害そのものであって、帰国した拉致被害者を帰さないことが人権侵害という北朝鮮の論理は全く誤りだ」と明言したものはない。永年の揉み手外交に毒されきた のが外務省や一部北朝鮮ロビー政治家だけでない感じが深い。マスコミよ、早急に襟を正せ。(伴)


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