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【2002年9月号】小泉訪朝をめぐるマスコミ・評論家の浅はかなテンヤワンヤを戒める

小泉首相 の北朝鮮訪問が突然に発表され、政界・マスコミ界・評論家の間では意表をつかれてテンヤワンヤの評論が飛び交っている。その中には比較的妥当なものもある が、おっかなびっくりでとてつもないものが多く、特にマスコミ界でトンチンカンな批評が多いのに驚かされる。これなど、いかに日本のマスコミ人の多数が、 独自の情報力も洞察力も弱く、このような場合に落着きを失うかの見本のようなものがある。

もともと、北朝鮮の経済が行き詰まり、亡命も相次ぎ、崩壊前の東独に類似する現象がでていたことは衆目の一致するところ。従来は、交渉するかに見えて食糧援助だけ食逃げするという繰返しであった。しかし、今回は事態はもっと深刻である。

その理由の1つはブッシュのテロ国家に対する「悪の枢軸」ときめつけた本気での強硬作戦が前提にあり、弱気のクリントンとは異なる。やはり依然としてパ ワーポリティックスが有効であることが明らかになっている。2つには朝鮮総連と朝銀系による日本からのカネの融通が、バブル崩壊と政府の金融支援政策によ る明確な選別で従来のようにうまくいかなくなったこと。3つには加えて中国が亡命多発や経済援助問題で、国際世論からみてつきあいきれなくなり、ロシアも また、北朝鮮が国際常識からみてまともな国家運営をしてくれなければ付き合いきれなくなったという背景がある。もとより、中ロ両国ともに、アメリカの意向 が反映し、一定の圧力を北朝鮮にかけざるをえない事態がある。その証拠に、この12年、中国は江沢民・李鵬など大物が訪朝し、金正日が北京を訪問し、ロ シアを訪問している。ついこの間はウラジオストックで、プーチン金会談があったばかりで、この際もプーチンの金への説得もあったことは容易に推察でき る。

最近北朝鮮は経済の大幅改革によって米の配給制をやめ、賃金の大幅改革をやるなど、金が本気で経済改革に取組み、市場重視の方向に動き出したようで、こ れも中ロの圧力とともに、金自身が危機意識から本格的転換を試み始めた兆候と見られる。還暦を迎えて後継者選びや後事の託し方も考えざるを得ない。そし て、対日政策では悪名高き在日「学習組」の解散や従来の朝総連経由をやめて直接外務省同士の交渉に正常化する決断も示した。

小泉の訪朝は、この半年ほど外相会談・局長級の詰めなど日朝協議が進展して、金からも好意的なメッセージが伝えられ、外務省のア大洋州局長の精力的な折 衝の中で、政治的会談が有効と判断した末のこととみられる。当然一国の首相が国交のない国に乗り込むのだから、覚悟も際立った成果も計算した上のことと見 るべきである。「首相専用機で、拉致被害者全員を連れてかえれなければダメ」は希いではあり、拉致問題は突破口ではあるが、外交交渉をその形態だけに矮小 化すべきではない。今までの自民や社民の政治家を含めた訪朝団の多くは国内政治での駆け引きと利権がからんでいて、つい米のバラマキに終わって、笑いもの になった。小泉には、少なくとも、その恐れはない。いわんや親朝派気取りの野中も加藤も土井も全く手出しができない状況にある。従来、親朝派気取りの朝日 系マスコミは、小泉の決断にケチをつけることに終始している。稚拙な評価は本人の品位を落とすだけである。不思議な「平和ボケ」といわざるをえない。 (伴)


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