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【2014年9月号】相次ぐ中国最高幹部粛清とそれをめぐる問題

この夏、中国は例年行われる共産党最高幹部の政治調整会議「北戴河会議」をめぐって、軍や政治幹部の動きが極度に緊張しているようである。中国では昔から時に「トラ狩りハエ叩き」運動という幹部粛清事件があるが、今年はそれをめぐっての政治動向が大詰めを迎えているからといわれる。もとより、これは継続中であり、今後どのように展開するかは予測を超える。

習近平国家主席は就任後幹部から末端まで蔓延してきた汚職追放に力を入れ、恐怖政治とまで言われて社会を緊張させているが、昨年、重慶市の党書記の薄凞来を妻女の罪悪を含めて
無期懲役にし、今年6月、党中央軍事委員会副主席の徐才厚を党籍剥奪処分とし、次いで胡錦濤政権で党中央法務委員会書記として治安公安・検察という司法権力の中枢を握るととともに
石油閥といわれる巨大な利権集団の中枢にあった政治局常務委員・周永康が摘発され、取り調べを受けていることが明らかとなっている。

中国では、従来、政治局常務委員級のトップ幹部に粛清の手が及ぶことは禁じ手とされ、その例はないことから、これらの事例は、習近平就任後の特殊な兆候であり、徐も周もともに元主席であった江沢民の密接な配下にあった最高幹部であったことから、この粛清は当然江沢民の許可を得たものとみられ、中国ではかつて見られなかった現象として、内外から注目されているのである。

毛沢東以来5代を数える習政権。一般的には7名の政治局常務委員というトップが執行体制を敷いているが、これらトップ幹部は不可侵の権力集中で行政権力を分担している。文化大革命による毛沢東の個人的横暴以外に権力を剥奪されたことはない。近年中国の権力形成は3つの出身閥によって支えられている。1つは上海閥―江沢民など文革終了後上海市政権幹部を形成してきた幹部集団、もう1つは民主青年団閥(団派)―胡錦濤をトップとする民主青年団幹部を出身とする幹部集団で、全国の各省政府のトップ経験者を中心とする幹部集団、太子族閥―人民中国成立後の最高幹部経験者の子弟・後継者一族が形成する幹部集団、これら3つの派閥の代表が権力中枢を形成してきた。文革以後は江沢民政権、その後は胡錦濤政権で、習近平は太子族であるが江沢民の上海閥に強く支持され、一種の連合政権といわれる。当然胡錦濤政権の実績に対してやや対抗的な傾向がある。特に胡錦濤政権下で首相であった温家宝は江沢民一派と対立的であり、在政権中もしばしば江沢民派を批判してきた傾向がある。習近平は太子族ではあるが、父親の死後かなり苦労して地方の農業や協同組合、さらに軍隊での勤務で努力して這い上がってきたといわれ、その行政能力を江沢民に買われて引き上げられたといわれ、今回の粛清のやり方にもその経歴が反映しているといわれる。

2018年、現政権は任期切れとなるが、この後任になりうるトップ幹部層は定年年齢などの関係で主に民青団派優位になることが前回選挙の際に明らかになっている。このためにこの粛清にはかなりウラもありうる。この粛清は所得格差の拡大問題などから庶民に支持されているが、粛清対象は何故このように何億という蓄財ができたのか、それは現トップ幹部も同様の利権社会が党と官僚社会に蔓延しているからで、この反省なしに中国社会は正常化しない。この根本的な是正こそが重要である。習近平政権は果たしてこれなどに成功するのか。あるいは中国に一大混乱が起こるきっかけになるのか。予断を許さない。         (伴) 


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