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【2014年4月号】世界危機を招く危険性

プーチンがクリミヤのロシア編入に踏み切った。戦時の混乱 期でもないのに易々と国境線が塗りかえられるという事態は異 常である。冷戦体制終了から4半世紀、中近東をめぐる国際テ
ロなどに対して専ら世界の警察官として国際秩序の形成や維 持に主導的役割を果たしてきた米国オバマ政権が、シェールガ ス開発などで大成功を挙げる一方でメディケアをめぐる保険政
策で共和党に敗北し、議会運営でマイナーとなり、中間選挙に おいてもそれからの脱出の見通しがなくレームダック状況で、他方中国との関係では2大国体制の確立という中国ペースに影 響されて世界政策への影響力を低下させてしまった隙を縫っ て、さらにはEUも世界平和への影響力を低下させている中で、 プーチンの旧ソ連秩序回復の野望を抑制できなかったことであ る。このままでいくと、プーチンのロシアが旧ソ連圏秩序を回復し て、黒海・中央アジア・カフカスを支配圏に置くという野望を抑 制できなくなる。ウクライナ問題はその一歩であったといえよう。

ウクライナは旧ソ連圏の中でロシアに最も近く、黒海沿岸で は両民族が混住し、しかも軍港が入り込み、ウクライナ東部は旧 ソ連圏の重工業地帯であり、チェルノブイリ原子力発電所もウク
ライナにあった。かつてクリミヤはウクライナ人―フルシチョフがそ の首相時代にロシアからウクライナに所属替えをしたところでも ある。ソ連崩壊時のすみわけに際しても、このような複雑な問題 があり、石油・ガス生産で経済力をとりもどしたプーチンはウクライナがEUよりになるオレンジ革命に対してかなり厳しいエネルギー政策でウクライナを攻めてきた経緯がある。今回のウクライ
ナ問題はそれをひきずっているのである。

ロシアは、ソ連崩壊後経済的に困窮したが、やがてオイル・ガスの生産に成功して、油送管をEUやトルコに敷設して現在はそれがEUの救いになっておりEUはその負い目も持っている。逆にロシアは製造業で成功せず、オイル―モノカルチュアになっている。特にシベリアなどの東方は全く人口も定着せず工業も伸びず、中国・朝鮮系の移住民が多く、社会が停滞し、プーチンはこれを嫌っている。日本はトヨタがプーチンとの交渉でサンクトペテルブルグに進出してかなり成功したがあまり拡大はしていない。プーチンはシベリアの工業化と人口定住を望み、日本との交渉に期待しており、北方領土解決もその一環と考えている。この中で、プーチンは領土拡大思考と同時に日本との交渉期待もあるのが実情である。安倍首相もこの点を重視している。この問題は複雑で、プーチンの帝国主義志向は西側一体となって抑制しなければならないが、むしろわが国のイニシアティヴで、この両面を解決する方向を目指さねばならない。なぜならプーチンの帝国主義志向はたちまち中国に利用され、対日・対アジアの領土問題に中国が便乗することとなる。中国もま
た、経済はうまくいっていないので、国民にナショナリズムをたきつける隙を与えてはなるまい。           (伴) 


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