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【2013年9月号】中・韓政権の反日キャンペーンの意味と本質

靖国神社参拝をめぐって今年も韓国と中国の外交筋・マ スコミが日本政府の歴史認識を問うということで、安倍首相 の発言をめぐって従来と異なって右傾化と騒ぎたてている。 毎年変り映えしないし、国際関係にプラスをもたらすことは何 もない。ただ、両国ともに対政府非難としてはトーンダウンして やや配慮しているように見えるのは、わが国からのトップ級の 話し合いの呼び掛けを拒否しつつ、実際には水面下の歩み よりが進んでいることを反映しているものといえる。

両国ともに経済的には未曽有の危機に直面して、わが国 のアベノミクスにみられるデフレ克服―経済成長路線への 転換と対比しても、何か嫌がらせをしたいという理由もあるの だろうが、それ以上にそれぞれ国民の中にある対政府批判 を跳ね返す手段として対日批判を利用したいということもあ るとみられる。  

何故、韓国の朴政権が中国とより親密に対日批判を強め たいのか、それには朴の父親がかつて日韓条約を結んだ結 果、韓国経済が好転したことを韓国内では親日政権として 非難する向きがあるのをかわそうとする意図があるからともい える。しかし、韓国経済の危機は金融体制の脆弱さに加えて サムスン一強体制で、しかもそのサムスン体制の危機が伝え られる中での揺らぎが反映しているとみられる。すでに第二 次大戦後の最終決着としての条約体制を無視してわざわ ざ個別の賠償問題を歴史認識と絡めて持ち出し続けようと いうのは、自らの弱点を糊塗するためとしか言いようがない。 歴史の歪曲はそこにある。  

一方、中国もまた、建国以来最大の経済危機が到来し、 習・李政権は国民から非難の的である極度な格差社会の 中で高級幹部汚職摘発に躍起であるが、自らの政権と緊密 な汚職摘発に難渋しているようだ。この汚職摘発が権力基 盤の強化という側面を持つので抵抗も強い。しかも中国政 権は政府統計の欺瞞と権力派閥の強化に寄与してきた体 制的腐敗の一種なので、権力を揺るがす可能性もある。計 画性の破綻と派閥対立の中で過剰生産を抑制できず、「世 界の工場」は今や世界の過剰生産の最大のネックになって おり、それが派閥権力闘争を所以としており、今や汚職摘発 が幹部亡命の頻発をもたらし、それが習政権そのものの権 力基盤にもかかわる様相を示している。

その結果ようやく悪 名高き中国統計の改革と「影の銀行」改革に取り組み始め たが、自らの基盤でもあるこれらの欺瞞を真に払しょくできる か。文革以上の内部革命を必要とする中国はこれをなしうる だろうか。しかも世界経済に最も大きな影響力を持つ生産力 を維持しながらどこまで革命が可能かが問われている。その 矛先を逃れるために外敵重視―そして反日という構図は容 易に克復出来まい。われわれは中国が好転することを願い つつ、そのとばっちりとしての挑発や攻撃から自国を守り、国 際的な努力で、その危機を乗り切らねばなるまい。(伴)


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