本サイトへ戻る
カテゴリー一覧

【2013年4月号】中国新政権の成立におもう

3月16日午後、中国第12期全人代(全国人民代表大会) 第1回会議において、李克強首相の指名にもとづいて、副 首相4人・国務委員(副首相級)5人、閣僚を含む国務院 人事を決定し、中国第5世代内閣が成立した。しかし、今回 ほど内部対立や人事混迷が明るみに出たことはない。

革命後中国では、政権交代は1年前の夏、北京北方のリゾート地 北戴河に家族を含む幹部が集まって党の基本方針討議を 行って党中央のトップ人事を決め、それに従って、翌年の秋 の党大会で党方針と幹部人事を決定するのが一般的であ り、文革終了後、毛沢東に次ぐ第2世代は鄧小平、第3世代 は江沢民、第4世代は胡錦濤を筆頭とする党中央幹部を 10年毎に選び、概ね翌年初頭には全人代を開いて政府の 方針と国務院人事を決めてきた。

今回もその流れは変わら ないが、今回は意見の対立や内部抗争があってそれが大幅 に露呈して紆余曲折を経ている。そのことは情報の公開作 用ともいえて決してマイナスだけではないが、明らかに党内 不一致を露呈し、必ずしも党内論議が機能的に行われてい ないことを明らかにした。

この間の状況からすれば、胡錦濤体制は経済・労働・行 政面でも法的秩序を整備し、和諧的であろうとするのに対し て、江沢民型の高成長・利権型の経済運営は伝統支配的 でその間に対立的なものがみられ、それが江沢民派の上海 閥的なものと胡錦濤派の民主青年団閥的なものとの政治 潮流の対立として明らかになり、これに対して党や軍隊の高 級幹部の子弟が太子族という新しい政治潮流を作り出し、 それが三つ巴の派閥抗争を呈してきた。

しかもこれが国営 企業や公共投資部門や軍隊における高級官僚利権として 党や官僚の高級幹部層の利権や蓄財による莫大な私的 所得とその家族の生活行動としての新富裕者行動が問題 視され、所得格差の異常な拡大が庶民の痛烈な批判を生 み出している。しかも、国有鉄道や道路・運輸・倉庫・軍隊 という公共支出部門における利権やそれに関わる高級官僚 や経営者群の所得や家族を含む生活態度に公然たる批判 が起こり、反日運動はこれら江沢民派の高級官僚が煽りな がら現実に運動が大きくなると批判の矛先が何時反政府・ 反高級官僚に向くかも知れないという恐れを常にもっている ので、一定段階で必ず当局側が反日運動を規制している事 実がある。

こういったことから、新たに成立した政権は「鉄道 省の解体」を第一番に挙げた。習近平政権は、一方で反日 を強弁しながら、この内部矛盾にも気配りせざるを得ない立 場にある。その意味でわれわれはあくまで冷静に挑発に乗ら ないで、粘り強く対抗しなければなるまい。同時に、いかなる 軍事圧力にも対抗できる法的整備と日米安保および中国の 被害を受けているアジア各国との海洋安保を経済協力と共 に進めるべきであろう。(伴)         


地球儀 の他の最新記事