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組合活動事例紹介:キリンビール労働組合(2012)

 「組合関与・組合評価BEST10」の組合関与においてランクインされている組織のユニオン・リーダーに、現状における組合活動の事例を直接お伺いすることができました。ここでは、ご許可いただきました内容を広く公開させていただき、個々の組合員がメンバーとして関与できる組合活動の展開の参考にしていただきたいと考えています。

立石 勉中央執行委員長にお話を伺いました。

Q:組合員の関与について、どのような実感がありますか。

まだまだ課題はあるという認識ですが、他労組と比較して相対的に高い結果となったことについては、ある程度の実感があります。支部が自立して自主的に支部運営を行えていることから、支部活動に巻き込まれる組合員の関与が一定程度あるのではと感じます。本部や支部執行部が活き活きと輝きながら組合活動を行えている状態を作ることが、組合員の組合関与を高める大きな要因に繋がると思います。

Qベスト10にランクインしたことに対して一言お願いします。

率直に光栄です。自労組の運動がどのレベルにあるのか、普段指標をもって他労組と比較することは難しい状況にある中、今回の組合関与(補正あり)No.1という結果は、諸先輩方をはじめ私達がこれまで取り組んできた方向性が間違っていないことを客観的に確認できた結果でもあり、大変喜ばしく受け止めています。


運動方針や関与型の取り組みについて

Q:労働組合の運動方針、問題意識、大切にしていることを教えてください。

労働組合はボトムアップの組織であるという認識のもと、組合員・支部が主体的に組合活動に参画できる環境づくりを心がけています。

そのなかで、人は財産であると位置づけ、「人財」という言葉を使い、労働家ではなく企業や社会に広く通用する「人財」を、一方的に教えて育てる「教育」ではなく、共に育てる「共育」に力を注いでいます。

労働組合は、組合員一人ひとり、つまり人によって構成されているだけでなく、その人によって魂を吹き込まれ、人と一緒に行動することで活き活きと輝く組織であり、人が人を想うことで最大限の力を発揮する組織、そして「人を想う人」を応援する組織であるとの認識のもと、「人」にフォーカスした取り組みを行っています。

Q:組合員の関与アップに向けた現在の取り組みには、どのようなものがありますか。

「課題解決システム」を紹介します。この活動は、キリンビール労組の組織理念に掲げている「企業と社会の永続的な発展」・「一人一人の幸せ」を実現することを目的として取り組んでいます。

支部が主体的に組合員の声を収集し、問題解決に結びつける取り組みを年間を通じて行うことにより、組合員が組合活動に触れる機会が増えることや、個人が抱えている問題が組合を通じて解決されることで組合に対する信頼感が高まることに繫がり、そのことが関与向上に結びついてると考えます。支部執行部・本部が主な主体となり、組合員を巻き込みながら取り組んでいます。

Q:具体的な活動内容を教えてください。

支部と本部が連携しながら課題の解決を図る一連の取り組みであり、組合活動の根幹と位置づけています。
 
1.組合員からの声の収集、2.課題の精査、3.課題への対応、4.組合員へのフィードバックと定着、のサイクルを支部の中で年間を通じて回し、支部で解決できない課題は本部に提言し解決に結びつけます。本部の中でも、1.支部で解決できない課題の収集、2.課題の精査、3.課題への対応、4.支部へのフィードバックと定着、のサイクルを年間を通じて回します。

また、本部は支部に対し、「課題解決システムを年間を通じて回すことの重要性」、「課題解決とはそもそも何か」、「組合員からの声の収集の仕方のポイント」、「収集した課題の精査方法のポイント」、「支部で解決できる課題と本部に提言してもらいたい課題の区分け」などを定期的に説明する機会を設け、支部の理解を深める取り組みを行っています。

Q:活動に対する反響、活動を通じた変化はみられますか。

キリンビール労組の基本活動として継続して取り組んでいますので、特に反響があるわけではありません。ただ、この取り組みが確実に支部の自主自立に繋がっていると考え、そのことが組合関与に寄与している側面があると考えます。また、組合員の声を「聞き抜く」ということを徹底するようになり、支部からの提言の質も高まってきました。

Q:今後も活動は継続される予定ですか。 

組合活動の根幹であり、最も基本的な取り組みのひとつと位置づけていますので、今後も継続する考えです。


ON・I・ON2への参画について

Q:関与の問題に切り込むに当たり、ON・I・ON2調査を実施した単組の背景についてお聞かせください。

キリンビール労組では3年に1度組合員意識調査を実施しています。 ON・I・ON2調査を実施した背景としては、実態把握に終わらない、原因究明型の分析ができること、他労組とのベンチマークが可能であること、組合関与が把握可能であること、といった部分に賛同したことが挙げられます。特に共同調査の設計コンセプトにある“組合員はお客様ではなく、目的を同じくしたメンバー”という考え方や、組合関与を上げることが社会性をより持った組合員を増やすことに繋がるといった考え方に共感しました。

Q:実際のアクションに結びつける上で調査が有効な点はどのような点ですか。

共同調査と比較できることはもちろんのこと、支部間での比較ができることから、支部単位で結果に対する原因の深堀ができ、より実態に即した打ち手を講じることができます。また、社会心理学を活用し、結果に対する多面的な要因を分析できることから、実際のアクションに結びつけやすいと思います。

Q:逆に、実際のアクションに結びつける上で困難なことをお聞かせください。

この調査結果に対し、本気感をもって向き合い、改善につなげる決意が必要であり、そこが一番困難なことと感じます。どの調査でも同じですが、調査することが目的にならないようにしなければなりません。計画の段階から、支部を巻き込んで調査結果をアクションに結びつけるためのタスクを設定しておくことが必要であると思います。

Q:最後に、労働組合として考える今後の課題、目指す方向、取り組みたいことについてお聞かせください。

近年会社が機能分化し、雇用形態の多様化や労働組合未組織の会社が増える中、キリンビール労組としては組織強化の取り組みに力を入れています。具体的には、働く仲間の組織化、組合員の範囲のあり方や単組の枠を超えた実現力のある労組組織ならびに労使関係のあり方について検討を行い、持続可能な労組組織の実現を目指し取り組んでいます。


ご協力いただきありがとうございました。


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