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【2011年11/12月号】滑り出し上々の野田政権─TPPへの参加は日本のレーゾンデ―トル

民主党・野田政権は発足後、余りにも党内に気を使った人事で八方美人・事無かれ主義といわれたが、TPP問題で党内外から多くの批判を受けながら、ともかくも執行部一体でよく対応した結果、粛々と参加協議を掲げてハワイ会議に出席し、これがカナダ・メキシコの参加を促すこととなり、世界4割のTPP参加をもたらした。課題はこれからだが、野田政権は幸先よくスタートしたといえる。何故なら、民主党政権は国内外の期待を浴びながら、鳩山政権はマニフェストに財政的裏付けが出来ず、見栄をきった普天間基地問題で自民党案に逆戻りという最も恥ずべき政治的結果を招き、対米関係を悪化させた。続く菅政権もこれを挽回出来ず、初っぱなから尖閣への中国漁船の領海侵入問題で国際信用を傷つけ、専ら小沢元代表との内紛に明け暮れ、さらに不幸なことではあるが東日本大震災にあたって東電原発破壊について毅然とした告発の態度がとれず、震災復旧は常識で考えられる以上に大幅に遅れ、避難住民はもとより全国民から非難されたにも関わらず、原発問題での閣内不一致などによって党内外から引きずり降ろされる格好となった。

かくて野田内閣は、この2政権にうんざりして不安を持つ国民に対応して、党内融和や閣内一致、不言実行型をめざしたといえるかもしれない。その結果、総理の記者会見や情報抑制が批判されるに至っている。しかし、総じてやや落ち着いた総理の行動も内閣の気風も一応の信頼感を得たものといってよい。もともと、発足以来この党のトップリーダーとして期待されてきた1人であり、一応予想通りのスタートといえる。しかし、これで安全運転が確立したわけでもなく、いよいよ野田内閣は本格的に国内外でその行動がシビアに評価される立場に立った。すでに15日前後のマスコミの世論調査で、各社ともに内閣支持率が発足当初から10%程度ダウンし、これまで同様に時間と共に低下していくのか、そうではなくて、これからの外交・内政通じて野田政権の真価をかける密度の濃い政治行動がそれを歯止めし、さらに回復させるのか、を迎えたことを意味する。

TPP問題は、わが国がこの参加を逃避したり日和見出来る性格のものでないことは、カナダ・キシコがすぐに呼応して参加したように、ASEANと共にアジア・環太平洋の経済協定としてわが国が率先すべきもので日米同盟の深化としてもわが国の役割は決定的である。農業問題にしても日米構造協議やウルグァイラウンドでわが国が達成できていない構造改革を本格的にやるべき時にある。対米従属とか何とか言って経済協定から逃亡する意見が有識者にもあるが、これは自らの敗北宣言にすぎない。またJAに連なる議員や政治家がこの交渉から逃避するのは過去の改革に本気で取り組んでこなかったからである。その証拠に、党を割ってでもと声高だった反対勢力も、事が決まれば言葉だけに終わっている。今回の問題でぶざまなのは自民党である。対米交渉の経験も多いはずなのに、TPPへの交渉参加も決められずに党内意見は分裂で、その不満が野田政権攻撃に回っているようだ。これでは次の選挙に勝てるはずはない。EUもアメリカも衰退傾向を持つ中でわが日本はさらに埋没して存在感を失うのか。内向き志向でアジアの中でも埋没するのがよいのか。(伴)


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