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【2011年4月号】中国に追いつく可能性示す大国インドへの期待と課題

3回目のインドを訪れた。1度目は80年代、2度目は90年代だが、いずれもデリー・ムンバイやジャイプールなど北部であり、ネパールにも行ったが、インドとの関係は宗主国と従属国との関係の様であった。ただ、インドは主にアーリア系でヒンディー語を話す北部とタミール語などを話すドラヴィダ族中心の南部との間には部族的な差があり、もっと小単位の部族的な差異もあり、複雑と感じてきた。特に最近は、チェンナイを中心とする南部がデリーを中心とする北部と異なって、ITやモータリゼーションでインドの成長のカギをにぎってきた。そこで、インド通の友人の誘いもあって、2月半ばに訪れた。インドは中国に次ぐ人口大国だが、10数年前までは悪名高きカースト制度や社会の遅れによって、とても成長軌道に乗るとは思われなかった。

インドは中国と異なって議会制民主国家で市場経済の歴史もあるが、戦後はソ連と友好的で社会主義的な国家経済計画にもとづいた運営をしてきた歴史があり、非同盟国というスタンスにある。さらに伝統的身分制と社会制度的遅れもあって、経済的には自由主義国とややかともみられたことがあったが、この10数年、このカースト制規制の福祉制度導入と共に、ITやモータリゼーションによる成長志向が強まり、それが具体的に年率10%の成長実績を生み出してきたことが世界的に注目され、バンガロールはシリコンバレーをモデルとする実績を生み出し、アジア新興国の牽引力となる可能性も評価されてきた。気づいてみれば、英語の準公用語化・幼少時代からの数学教育の成果やノーベル賞受賞実績などが注目される。こんな思いも持って訪れた結果、さまざまな発見があった。まず、IT革命の拠点バンガロールやそれに並ぶマイソール・ハイデラバードなど南部拠点都市は、ごみが圧倒的に少なく、街がきれいな事に驚かされた。これに対して、かつてマドラスと呼ばれた西インド会社の拠点都市は、現在イギリス名を嫌がって「チェンナイ」と改名された800万の巨大都市だが、ここやデリーの汚さはかつてと変わらなかった。

しかし、この国の不思議は、28ある州が自治力ある事実上の国家で、言語も州の数だけあり、共通語は英語であり、それ以外に多人口部族のヒンディー語かタミール語(ドラヴィダ語系)のどちらかを使い、英語が通用する。憲法でカースト制は禁止されているが、生活慣習上公然とまかり通っているという。恐らく2020年には新興国入りし、人口(現在11億)も25年には中国に追いつくといわれるインドの可能性は大きいが、今後の10年に期待したい。(伴)


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