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【2009年3月号】日本の企業人の覚悟と品位が問われる時代

アメリカ の金融危機による景気後退は、主に輸出製造業の大幅な需要減退に起因する赤字決算と設備過剰下のデフレマインドによって、急速に拡大している。毎日のマス コミ報道もやや同調過剰な感じが強く、世の中が灰色一色に包まれる傾向にある。しかし、他方、内需型で努力してきた企業では黒字決算も見られる。例えば、 マクドナルド、サントリー、任天堂などがそうである。

乗用車・電機・鉄鋼・石油製品・石化など外需型製造業で設備過剰に陥っているところは稼働率が大幅に低下しており、他方、米欧と比べてサブプライム問題 の影響が少ないといわれた日本のメガバンクは、本来バブル崩壊後株式持ち合い抑制を決めたが守られず、株価の大幅低落の影響で財務が悪化している。

内閣府による「景気動向指数研究会」の報告(09年1月29日)は、景気後退局面に転換した「景気の山」を07年10月としている。このことから、景気 後退局面下の過剰設備投資に至った見通しの甘さも否定できない。今回の金融危機が世界的な規模で起こっており、その影響から免れるのは不可抗力であるとは いえ、企業決算の悪化にはそれなりの経営判断のミスも否定できない。

労働組合は久方ぶりに本格賃上げ要求を進めているが、08年度期末決算は軒並みに悪いとしても、08年度前期における決算は極めて好調であったし、大企業の社内留保も分厚いものであることは注目しておくべきである。

外需依存の強い日本経済にとっては、円高=不況と考え勝ちであるが、事態は複雑である。原油価格は40ドル程度と大幅に低下し、非鉄金属・鉄鉱石・木材など主要輸入素材価格は大幅に下落し、円高差益が還元される状況にある。

問題は、80年代後半プラザ合意によって急激な円高がもたらされ、金余りがみられたが、その際、筆者はさらなるイノベーション、内需主導の経済への転 換、インフラ整備(電柱の埋設、下水などの共同溝化、駅や公共建築でのバリアフリーの強化)への大幅投資などを積極的に主張した。しかし、実際には国内で のノンバンクを使った地上げと海外での投機に走った金融・不動産企業が多かった。88年ニューヨーク・マンハッタンを訪れたが、タイムズスクエア(45丁 目)から50丁目まで、シティバンク・パンナム・ロックフェラーセンターなど、すべて日本企業所有の土地を通って歩けた。美術オークションでは日本マネー によるとんでもない値が付いた。日本での経営セミナーなどで、「もはやアメリカから学ぶべきものはない」と豪語する財界人もいた。まもなく日本のバブルは 崩壊し、外国での不動産は無残に損失を上げて売られ、美術オークションでの価格は低落した。円高に直面して、やみくもに派遣切りを行うなどという日本の大 企業人の行動に接すると「悪夢再び」の感じがある。このときこそ企業人の覚悟と品位が問われる。(伴)


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