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【2006年8月号】「北朝鮮非難」安保理満場一致決議を通して見えたもの

北朝鮮のミサイル発射に関する国連安保理の決議が全会一致でまとまった。評価にはいろいろあるが、今回の日本政府の態度は評価される。「日本案が通らな かったのは日本外交の弱さ」「日本案が強行過ぎたのはアメリカに利用された」などという批判は外交について無知な意見である。今回の交渉経過への対応は実 に教訓的で面白い。以下、指摘する。

1:最も厳しい案を日米共同で安保理に提案したことはミサイルの矛先が向けられた当事者として当然で、しかも独自案を安保理に提案したのは日本外交とし てはじめて。最後まで突っ張りながら落しどころをアメリカと陰に陽に協調しながら探ったことが全会一致に至った要因。途中でアメリカとのすれ違いに見えた 事を日米同盟の空洞化と見る意見はおかしい。イラク問題など米欧間の隙間への配慮やブッシュ政権内の確執が反映したのは事実だが、ニクソンの米中国交でも クリントンの米中協調でも、日本の頭越しは再々起こっていることで、ヴァリエーションの1つと見た方がよい。また、今回の事件は、まず日・米に売られた喧 嘩で、日・米が当事者で欧州にとっては距離感も遠く、切実度は低く、温度差が反映するのは当然。さらに、当初の案が素直に通るものでないことも読み込み済 みで、むしろ交渉力としての突っ張りが利いたと見るべきだ。

2:その突っ張りが利いた条件は、第1に北朝鮮への影響力を売り物にしてきた中国が、北朝鮮に袖にされて面子丸つぶれになり、第2に中国に協調しようと したロシアが、サンクトペテルブルグ・サミットまで持ち込まれては大変という事情があった。おまけに、安保理決議直後に、北朝鮮が直ちに拒否声明を出した のも異例で、さらに面子がつぶれた。

3:北朝鮮の内情は、先軍路線による軍部の圧力が突っ走った結果とミサイルビジネスのデモンストレーションのようだが、テポドンは完全失敗だったので、 軍部の責任問題が派生するか、次の発射実験がいつ出来るかが問題。実験と称しながら予告もせず、中国への予告も1時間前だったそうだ。それは計算づくなの か、内部混乱の結果なのか。

4:ほとんどの国民は、北朝鮮が本気で打ち込んできたとは思ってないが、65%が「危険」と感じ、「平和ボケ」から覚める機会となった。改憲も含めてミ サイル防衛体制の議論を真剣にすべき時だ。社民や共産は「防衛より外交」などというが、この2党は朝鮮労働党と友党のはず、北朝鮮へ使節団でもすぐ送った らどうか。まず自ら実行せよ。民主は、若い議員は今回の政府の対応に肯定的だが、小沢党首は「政府がアメリカに利用された」かの発言をしている。トップ3 人雁首揃えて選挙のために訪中していた最中だが、対ミサイル問題で中国に対して野党外交の成果はなく、「中国に逆利用された」感あり。新聞社代表は朝鮮語 の出来ない者ばかり指名されて、めぐみさん死亡証明に平壌に招待されていた時期。ウラ話では、支局開設のため競って行ったようだ。とてもミサイル問題など 取材できていないし、これも嵌められたようだ。誰が真の意味で成果を上げたか。

5:小泉外交にも問題はあるが、トップとして初めて訪朝し、拉致被害者の奪還と平壌宣言など、格段の成果は評価すべきである。この宣言違反問題が今回も利いている。(伴)


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