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【2003年11/12月号】二大政党政治への可能性は出来た。 しかし、国民の信を得られるか?

国会が解 散・総選挙となった。従来の内閣不信任による解散と異なる。今回は、明らかに首相のイニシアだが、与・野党議員挙って総選挙待望だったから特に問題はなか ろう。ただ、解散宣言が行われた途端に一同「万歳」となるのは、何の意味なのか。不信任可決の結果なら提案側に理由があろうが、今回の場合は理由がわから ない。

さて、今回の解散は、小泉―改革推進・菅―マニフェスト、と命名されているが、「マニフェスト解散」というのも、マニフェストが理由でないのでよくわからない。

今回の総選挙は、小泉政権の評価が基本になることは間違いない。小泉の掲げた構造改革がすべてうまくいっているわけではないし、遅れもある。しかし、デ フレからの脱出・製造業の回復・株価の回復・有利子負債の解消・景気回復のメド・失業率の低下などをはじめ、郵政・道路や公社・公団の改革は具体化してい ることは明らか。安全保障政策も積極的転換し、拉致問題も窓口はあけた。自民党の派閥解体・派閥人事の解消もすすんだ。問題は一歩前進して窓口をあけるご とに次の課題が迫っているという状況にある。筆者は、このことを評価した上で、次の窓を開く時点にあると思う。

民主は、自由と合併して大型化し、マニフェストを提起して小泉との対決に挑み、二大政党制の確立の可能性に迫ったことは結構。しかし、基本は政権交代へ の信頼を確立することにある。その視点から見る限り、民主のマニフェストは少しは具体的提起があるとはいえ、小泉路線と同次元のものに過ぎない。小泉への 批判の基本であった「国家像」も示されていないし、安全保障戦略は全く示されていないし、郵政民営化でも新しさはない。目立つのは「地方高速道の無料化」 と年金のための「消費税引き上げ」と国会議員・公務員等の削減を含む「官僚依存の打破」などである。高速道無料化は、結果的には国営のままで財政負担は現 在と変わらない。消費税も3年後以降というので、結局「3年以内は上げない」という小泉と余り変わらない。官僚依存打破をめぐる提案は評価出来る。
基本的に、二大政党による政権交代を主張するなら、批判と同時に政策の連続性が保証されねばならないが、菅や小沢の発言は、小泉政策の「全否定」になっ ている。しかも中身は、路線上それほど異なったものではない。そこに不安がある。菅・民主は、小泉政権への態度で、サポートか対決かで揺れに揺れ、選挙が 近づく程対決型になった。やはり、評価すべき点は冷静に評価した上で、批判の価値観を明確にすべきであろう。

この不安さは、正当な手続きを経た上で選出した前党首鳩山をクーデター的に引きずり降ろし、次点の菅を選出し、その幹事長に鳩山支持だった岡田が就任す るというイレギュラーがあったこと、しかも鳩山がすすめた自由との合併を一旦否定しておいて、突如解散を前にして合併が決まるという組織感覚への信頼性が 問われることである。民主と自由の間には、国家像レベルの差があり、旧社民・横路グループとの間には格段の路線差がある。この意味で、民主の行動様式とマ ニフェストには、自ら克服すべき盲点がある。しかも、小沢は筆者も好む有能なリーダーだが、折角生まれた党でも政権でも気に入らないと潰すという過去が再 々ならずある。これらがわが国民の信に耐え得るかどうか。そのあたりが総選挙の焦点である。(伴)


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