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【2002年10月号】対北朝鮮問題位は大いに反省して超党派が組めないのか

前号で小泉訪朝問題をめぐるマスコミ・評論家たちの右往左往ぶりを論評したが、今回は引き続き、訪朝結果をめぐる問題をとりあげる。まず、前号でも示唆し たように、金正日の出方は、「拉致を認めて謝罪する」という予想以上のものであった。もとより、それは口頭であり、文章化は明確にされていないし、拉致被 害者の中の多数が「変死」あるいは「死因のいかがわしさ」を残すものであり、「拉致」についてはキム自身が明確に責任回避したものであった。

しかし、今まで、「拉致」問題を出せばそれを認めず、席を蹴ったという経過からみても、過去30年にわたって否定してきたことをトップが認めたことは大 きな外交的前進であることは疑いないし、同時に以後この種の問題を起こさないこと、ミサイルや核開発等の安全保障関連について国際的信義を守ることを表明 したことは明らかにいままでと異なるものとして評価できる。

もとより、条約にまで至らない基本的了解であるから相手が守り得ないことは起こり得るし、北朝鮮にその可能性はある。しかし、もし相手が違反すれば交渉 をストップすればよいだけである。「小泉は席を蹴るべきだった」などどいう政治家や評論家がいるが、交渉の途中でも相手が信義則に違反すれば、いつでも席 は立てる筈だ。今回の平壌声明は、交渉ルールのための申し合わせにすぎず、条約でもなければ協定でもない。そのことは声明文が同意約款でないことからみて も明らかである。もっと日程をかけるべきだという意見もあったが、このような性格だからこそ短期でよいのである。

このあたりの議論をみていると、小泉の成果に対する政治家のヤッカミがみえみえである。今まで「拉致」問題を、全く国際テロ問題や安全保障問題と認識せ ず、被害者家族の訴えをほとんどまともに聞いてこなかった有力政治家の責任は重く、ここで明確に反省すべきである。それは第1に「もともと拉致問題はな い」といってきた旧社会党などのリーダー、第2に問題をすりかえて、ひたすら北朝鮮のご機嫌をとろうとして必要以上に米援助などに走った者、第3に被害者 家族の動きを抑制しようとした者、などである。これらが渾然一体となって問題をすり替え今日まで放置したにもかかわらず、小泉批判によって再び責任逃れを しようとしている。

金丸・田辺代表団は何をしたのか、当時自民党の中枢にいた小沢は何をし、野中や中山は何をしたのか。土井社民は何をしたのか。かつて官房副長官だった鳩 山は何をしたのか、厚生大臣だった管は何をしたのか。すべての要職にあった者がまず反省し、あらたな決意で国家をあげてこの問題に立ち向かうべし。これこ そ超党派でやるべきなのに、他者をけなして済まそうとする。ここに日本政治の腐敗と無責任がある。すべてはこれからの交渉にかかっている。平壌宣言の不十 分なさど、余計な政治家に教えてもらわなくても国民の多数は知っている。小泉内閣の欠陥についても国民は知っている。日朝会談後の小泉内閣の支持率の上昇 がこれを物語っており、同じ調査で小泉内閣への政策批判も高いし問題も多い。重要なことは、「まともな行動も本気で起こさない政治家は早く去れ」「今まで 出来なかったことへの反省があるなら、超党派で事にのぞめ」ということであり、コップ中の嵐に明け暮れる政治は不要だということだろう。(伴)


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