本サイトへ戻る
カテゴリー一覧

【2019年8月号】中国経済減速に世界が注目

すでに予測されていたことではあったが、世界経済の中でも新興経済の活性化の中で注目されてきた中国経済が失速し始めたことが、世界の注目を浴びている。中国国家統計局が発表した2019年4~6月期の実質成長率が前年同期比6.2%となった。これは中国がすでに掲げてきた「2020年の国内総生産を2010年比で倍増する目標の達成」のためには、2019~2020年に平均6.2%の成長が必要で、その下限で成長が止まり、黄信号がともったことになる。これはリーマンショック直後の2009年1~3月期(6.4%)を下回って四半期として統計を遡れる1992年以降で最低となった。そのため、中国は急遽その方針を転換せざるをえなかったのである。その結果、急遽方針転換に至ったというのが実情である。
 
中国国家統計局の毛盛勇報道官は、7月5日の記者会見で、「国内外の経済情勢は複雑で厳しく、経済は新たな下押し圧力に直面している」と語り、中国経済は1~3月期に1年ぶりに成長率の縮小が止まったが、再び減速に転じた。輸出が減り、それが生産や投資の減少を招いた。そして、内需低迷で輸入も減少した。自動車・携帯電話などいずれもマイナスに転じ、米国の追加関税の影響でロボットの生産台数も10%減少した。さらに、貿易の減退を含めて投資の大幅な減少によって生産が減退し、国債の保有残高が3カ月連続で減少し、日本と首位逆転が起こった。さらに、外資の撤退を招いている。これら総じて景気の大幅で急速な減退を招き、中国経済は明らかな景気後退と構造的不況を顕在化させた。  

従来、社会主義化の下で「一種の国家資本主義計画経済としての中国経済」という認識が一般化する傾向にあったが、その内実は市場経済を導入して国有セクターのウェイトが高く、国家の経済介入による景気維持策を基本にした「一種の国家資本主義」であって、全体として未成熟な経済体制から高度化していく過程で余力をもっていた経済構造が一定の成熟期に入って構造的な景気後退を招いたということと考えてよいだろう。国家の体制支配は強いが、何といっても成熟期を迎えて国家主導の景気維持策も一定の限界に達したとみるべきであろう。既成の資本主義国家と比べて未だ未成熟な要素もあるので今後の展開が注目されるが、中国経済が構造的に新たな段階を迎えたことが注目されるのである。 (会長・板東 慧)


地球儀 の他の最新記事